「大自然と自由」イージー★ライダー バンデラスさんの映画レビュー(感想・評価)
大自然と自由
10代の頃から観続けているオールタイムベストのひとつ。あるがままに自由でいることの素晴らしさ。あるがままに自由でいることの難しさ。アメリカの壮大な景色と、その景色と見事に融合する極上の音楽達が訴えかけてくる。優しさ溢れるピーター・フォンダ。狂気を垣間見せるデニス・ホッパー。彼らとそんな1969年アメリカを旅している気分になれる。サントラも擦り切れるほど聴いた。全てが最高なマストムービー。
2020年2月1日、ユーロスペースにて念願の劇場初鑑賞。やはりスクリーンで観るこの作品は格別。素晴らしい景色、最高の音楽、自由に生きるということ。序盤の「Born to be wild」が流れるシーンから涙が止まらなかった。青春が詰まっている。NO.1ロードムービー。
2021年6月12日、午前十時の映画祭でスクリーンにて2度目の鑑賞。歳を重ねれば重ねるほど本作が真に大傑作であることを心の底から理解することが出来る。10代の頃に観ていた情景とはもはや別物だ。歳を重ねるにつれて、自由や理想は舞台袖に捌けて行き、現実が幕を上げる。それは映画の予告編と本編の関係にも似ている。1969年アメリカ、デニス・ホッパーは33歳、ピーター・フォンダは29歳、ジャック・ニコルソンは32歳。自由や理想を夢見る若年期と、自由や理想がどの様なものか悟り始める中年期への過渡期。その様な年齢期に彼らが創り上げた人生に普遍的な内容の大傑作。嫉妬、憎しみ、差別、余裕の無い俗世間での生活。時計を捨てるキャプテン・アメリカ。捨離、自然、自由、余裕、優しさ、俗世間と離れたスローライフ。しかしそれと比例して増していく俗世間の冷たい視線と風当たりの厳しさ。余裕の無い俗世間は毛色の違う者を嫌う。先住民や黒人が元々は自由だったように。いつの時代も自由や理想を遠くから眺め羨む眼には血の臭いや死の臭いがこびり付いて消えない。キャプテン・アメリカは旅を進めるにつれて自由や理想が刹那を土台にして成り立っていることに気がつき始める。本作は自由や理想を夢見る若年期への別れとも受け取ることが出来る。1969年アメリカ、自由と理想の終焉。デニス・ホッパーはこの後も自由と理想を諦めずに「ラスト・ムービー」でもうひと暴れ(これ以上の大暴れ)をする。しかしその結果、ハリウッドから異端児扱いされ淘汰され干されてしまう。歳を重ねて本作を観返すと若き日に繰り返し観た時には気が付かなかったデニスやピーターがスクリーンに体現したその確かな自由と優しさの大切さや貴重さを噛み締める。そしてそれが人生の中の刹那であるという無常観と、切なさや愛おしさも。序盤から涙が止まらなかった。10代の頃には本作を観て号泣するとは思いもしなかった。キャプテン・アメリカの死と共に朽ち果てる自由と優しさ。歳を重ねるにつれて本作に描かれたものの大切さや貴重さが身に染みて分かっていく。時代の風潮や流行に決して左右されることのない人生の中にある普遍的感覚を描いた大傑作だ。