「魅せる、科学の世界」アンドロメダ… ダックス奮闘{ふんとう}さんの映画レビュー(感想・評価)
魅せる、科学の世界
「サウンド・オブ・ミュージック」などの名作を世に送り出したロバート・ワイズ監督が、「リトル・ロマンス」のアーサー・ヒルを主演に迎えて描く、SFサスペンス映画。
片田舎を突如として襲った宇宙からの病原体。正体を明らかにするために、様々な分野の専門家が招集された先は、地下に眠る極秘科学実験施設だった。もう、あらすじから既に壮大な物語を連想させる。
もちろん現代にも同様のテーマを扱った作品は多数存在するため、奇抜さは感じられない。しかしながら、「1971年の作品か・・古いな」で観賞を拒絶するには余りに勿体無い、創造力とリアリティ追求、相互の才気が漲る力作に仕上がっている。
SF=サイエンス・フィクションという表看板通り、綿密に編み込まれた専門的な科学的知識を、個々の一癖も二癖もある専門家達から滲み出す個性、人間臭さの中にリズミカルに躍らせ、眠気を誘うような一部のファンのみ大喜びの硬派な一品とは一線を画している。
その大きな役割の一端を担っているのが、71年当時としては大いに奇抜であろう美術の力だろう。現在であっても、フ〇ンフ〇ン店舗のど真ん中で「何か、レトロじゃねえ?」と陣取っていそうなどぎつい色彩の椅子や食器、その他もろもろに目を奪われたと思えば、無機質な部品をエンジニアに頼んで組み立てましたと言わんばかりの精巧な科学装置の丁寧な描写に感心したり。
一本の縦軸である細菌兵器の恐怖をより臨場感溢れるものとして成立させるために、細部にまで行き渡った「魅せる」意欲をもって観客を物語に一気に引きずりこんでいく。気が付けば2時間強のドラマは畳み掛けるスピード感を持って幕引き。まさに、息つく暇もないとはこの事である。
古いから・・・専門用語多そうだから・・・まあまあ、そうおっしゃらずに一度、本作を手に取っていただきたい。「科学で、こんなにわくわくさせられるとは」と思わず唸る、目から鱗の驚き体験をここにお約束します。