「命がけのジャーナリスト魂」アンダー・ファイア バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
命がけのジャーナリスト魂
1979年の内戦下の中米ニカラグアを取材するカメラマンとジャーナリストを主人公とした社会派映画。ちょうどこの頃は他にも『キリング・フィールド』(未見)とか『サルバドル 遥かなる日々』といったジャーナリストを主人公とした社会派映画が作られたが、この映画の存在は2~3年前に初めて知った。あの頃にエルサルバドル内戦と並んで米国がCIAなどを使って介入してたニカラグア内戦を描いてることに興味を持ったが、Blu-ray化のみでDVDは無いようで当然レンタルは無く、買うほどでもないし……と思ったらCSのザ・シネマで放送されたんで録画視聴した。
ニカラグア内戦は父と兄との3代に渡る独裁者ソモサ大統領と左翼革命組織サンディニスタ民族解放戦線によるもので、映画にはソモサ大統領も解放戦線も出てくるものの基本的には架空人物によるフィクションの話だが、実際に米国のテレビ局のレポーターがニカラグアの国家警備隊に射殺されて、そのニュース映像が世界中で報道された事件にヒントを得て製作されたとのこと。
冒頭からプロローグとしてアフリカのチャド内戦を取材するシーンが出てくるが(チャドもその頃内戦だったんだなあ)、わらわら出てきた象兵を爆撃機がバンバン爆撃して象さんたちがパオーンと逃げ惑うシーンに、象が暴れたりしなかったのか?と撮影が心配になるようなスケールの大きい大作っぷりを見せつけてくれる。舞台が本筋のニカラグアに移っても同様で、戦車が出てきたりとかなりの大掛かり。そんなリアルな舞台の中で描かれるのは報道するジャーナリズムの使命と矜持、そしてそれを超えた人としてのあり方だ。なんでも日本では大コケしたらしいが、まさに隠れた良作という表現通りの映画でした。面白かった。
ちなみに映画はソモサ政権が倒されてニカラグア革命が成就されるところでめでたしなんだが、実際にはその後もカーターからレーガンに代わった米国の再介入で第二次ニカラグア内戦が始まってしまうのでした。
