「"砂漠の英雄"が辿る数奇な運命」アラビアのロレンス しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
"砂漠の英雄"が辿る数奇な運命
第35回アカデミー賞作品賞受賞作。
Blu-rayで鑑賞(吹替)。
イギリス軍の一少尉だった男がアラビアでレジスタンスを指揮し、オスマン帝国軍との戦闘に勝利してアラブ独立を成功に導くまでを、壮大なスケールで描いた歴史超大作。
実在のイギリス陸軍将校トーマス・エドワード・ロレンスのバイク事故死から幕を開けた物語は、生前における栄光に彩られたアラブ独立闘争での活躍を振り返っていきました。
砂塵を巻き上げながら、縦横無尽かつ迫力たっぷりに描かれた砂漠の戦闘シーンのスペクタクルが秀逸。大量のエキストラを動員した映像に漂うリアリティーに心を奪われました。
独立後、その立役者であるロレンスは白人がアラブの独立運動を指揮していたと云う事実が邪魔になったがために、共に戦った仲間たちから排斥されてしまいました。
民族衣装を纏って見舞いに訪れた戦傷病院ではアラブ人と間違われた挙句、「この状況をつくりだしたのはお前たちだ」と罵られる始末。アラブ議会では民族間のエゴによって政治が混乱していて、様々なことが後回しにされていました。
これまで自分がやって来たことにはいったいどんな意味があったのだろうか?―達成感と高揚に満たされていたロレンスの心に、圧倒的な絶望と虚無感が去来した瞬間でした。
砂漠の陽光に映える白の民族衣装を身に纏い、アイデンティティーの狭間で苦悩しながらも、アラビアを救うため、ひとりのアラブ人として激烈な戦闘に参加したロレンス。
そんな彼に待ち受けていたものは、華々しい名誉と栄光だけではなく、それが裏腹に隠し持っていた残酷なまでの孤独と寂寥だったのかもしれないと思いました。
盛者必衰と云うか、英雄はその存在自体が劇的過ぎるものであるが故に、役割を終えてしまえば途端に疎ましがられ、必要無いとばかりに虐げられてしまうと云うことか、と…
悲しい運命ですが、それは歴史が雄弁に物語っていることでもあります。英雄譚の裏側に秘められたものの正体は、彼もひとりの人間であったと云うことかもしれません。
※修正(2022/07/11)
asicaさん、コメントありがとうございます。
三時間越えの大作映画は、最近で言うと「アベンジャーズ/エンドゲーム」くらいですね(笑)
ただ長いだけじゃなくて、スペクタクルと人間ドラマのバランスと緩急が素晴らしいですし、本作は特にasicaさんもレビューで仰っている通り、第1部と第2部の構成が巧みですよねぇ…。
「午前十時の映画祭10‐FINAL‐」でリバイバルされるので足を運びたいと思っています。
懐かしい題名に惹かれてしまいました。年齢がバレそうですが、私これ、中1くらいの時、学校で連れて行かれて映画館で見ました。途中 休憩のある2部構成(笑)
今どきそういう興行ないですよね。
第一部のイケイケ感と、対照的な二部の挫折。それがすごく記憶に残っています。大人になった今見たらどういう感想なのだろうかと興味が湧きました。
今のアラビア情勢とは随分 変わってしまってるのでその辺りも興味深そうですね。