「映画史の一里塚。こっちまで雨の中で歌いたくなるよ」雨に唄えば きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
映画史の一里塚。こっちまで雨の中で歌いたくなるよ
ちゃんと観たのは初めてです。
お正月のTV地上波でした♫
あのアカデミー賞独占「The Artist」は、なるほど、この映画のテイストを踏んでのものだったのですねー。
「ミュージカル映画」って、本場ブロードウェイまで行けない地方の庶民のために、工夫して提供された娯楽なのでしょうね。
劇場の舞台の上に設えられたスクリーンに、まるでそこに生身の俳優たちが歌って踊っているかのように、ミュージカルのステージが写し出されるわけですから、これはまったくうまいマリアージュだと思いますよ。
⇒ かの有名なピアニストで作曲家だった偉人フランツ・リストは、オーケストラという物を見たことのない &経済的にオーケストラの楽団を呼べない、そういう小さな街での演奏会のために、ベートーヴェンやワーグナーの大掛かりな交響曲をピアノ用に編曲しました。そしてリスト本人が欧州の各地を回りました。ピアノならどんな田舎にもありましたから。
演奏家自身が聴衆の前まで旅をして、移動をしなくてはならなかったのは、まだレコードの録音技術が発明される前だったからです。
この映画、
無声映画時代の、
下積みの長かった好青年ドン・ロックウッドくん=ジーン・ケリーと、
"その他大勢”の役柄でショーダンサーをやっていた舞台女優のキャシー・セルドン嬢、
この二人のやり取りから生まれた、活き活きした化学反応の物語でした。
=あなたはただのフイルムの影ね
=何をやってもおんなじじゃないの
=映画は観ないわ
・・キャシーの急所を突くこの批評に頭を抱えたのは、それまで順風満帆だったドンでした。
無声映画がトーキーに移り変わるという、激動期の、そして過渡期の、ショービジネスのすったもんだを楽しく魅せてくれましたよ。
サイレント映画であれば、俳優たちは見栄えさえ良ければそれで構わなかった。声も歌も入らないのだから。
だからカメラを回しての撮影中も、スタッフや監督が横で喋っててもぜんぜんOK。なるほど~
ところが同時レコーディングとなると、それまでの映画俳優たちが、大慌てで録音のための滑舌発声練習とか、
不細工な"大型ピンマイク”の失敗とか、
そしてアテレコの発明とか。
そしてどんなに映りが良くても、声も歌もダメだったリナが、大恥かかされて追放されるシーンは、ちょっと可哀想で同情なんです。
(ハイビジョンの放送開始で、アップに耐えるために、メイクのドーランを変えなきゃいけなかった俳優さんたちも、いくらか同じ気持ちでしょうか、笑)。
トーキー誕生のあの頃、仕事を失うことに戦々恐々としていたスタアたちは、あんな風にたくさんいたのだろうなぁと思います。
あの「The Artist」と一緒に観れば活動写真の発展と歴史がわかりますよね。
加えて、常に芸に誠実であろうとしていたドンの姿勢は、第一級のエンターティナーとして、安心して家族全員で鑑賞できるオススメの映画だと思いました。
そして僕が思い出すのは、あのディズニー初の、トーキー総天然色アニメーションの「ファンタジア」を観たときの衝撃!
あのちょっと古風でありながら、細部に至るまで徹底的に作り込まれた、当時としては最先端のサイケデリックな絵柄と色彩。あれに ノックアウトされた日のことです。
「雨に唄えば」の演出や振り付けの独特な雰囲気は「ファンタジア」を彷彿とさせます。
新しい時代へのとんでもない意気込みを両作に感じるのです。
今回、デジタルリマスター版で、映像と色味が、ここまで艷やかに復活するとは、心底驚きでした。
でもこんなに甘いマスクで、ジーン・ケリーにニッコリ微笑まれたら、そりゃあ誰だってイチコロっていうものです。
エンディングは めでたしめでたし。
お正月からいいものみせてもらいました。
きりんさん、フォローありがとうございます。ログアウトを初めてしてログインしたら何だか変なことになってtalismanが二つできてしまいました。
プロフィールの写真を変えたのが、シンtalismanです。すみません
共感とコメントをありがとうございました。
この映画を観ると幸せになります。
『アーティスト』も『ぐず』も未見なので、コメントできませんが、心に留めておきます。
共感ありがとうございます。
音楽や映画のの知識満載で勉強になりました。
ベートーベンの交響曲をピアノに編曲するリスト。
地方に届けるためだったのですか?
オーケストラの下練習もピアニストが、しますよね、確か。
超難曲だと思いますが、リストが演奏家として凄いテクニック
だったから出来たことですね。
あらためてリスト偉さ凄さを教えて頂きました。
ありがとうございます。
きりんさん
あの有名なシーンは知っていたのですが、観たのは録画ながら初めてでした。
観客をワクワクさせる、素敵な作品ですよね 🎞️
寒いこの時期に辛いニュースが続いていますが、これ以上揺れないよう願っています。
明けましておめでとうございます。
正月休みは、只管1930年代から1950年代の映画を見ています。
映画文化の底知れぬ深さと面白さにノックアウトされています。
では。今年も宜しくお願いいたします。
おまけ
そういえばチャップリンの映画は、最晩年の作以外はすべて無声映画だったのです。数十年後にトーキーが可能になって初めてチャップリンはあとからあの名曲の数々を作曲し、劇音楽として付け足しました。