「奴隷船「アミスタッド号」の真実」アミスタッド 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
奴隷船「アミスタッド号」の真実
事実を基にした映画です。
1839年。
スペインの奴隷船「アミスタッド号」で起きた奴隷の反乱。
黒人は乗組員を殺し、船を操縦できる最少人数の航海士を残すも、
船は意図的にアメリカ沿岸に、到着してしまう。
黒人奴隷たちは、海賊行為と殺人罪で逮捕され裁判にかけられる。
(日本にこの時代、裁判制度はなかったと思います。
(お白洲の大岡裁き・・・くらいしか浮かばないが、)
(大岡越前守は17世紀、江戸時代の人。)
(日本の最初の裁判制度は明治22年(1889年)に始まっています)
ともかく正当な裁判は始まる。
黒人奴隷の話す言語も判明して通訳が付く。
奴隷のリーダーは“シンケ(ジャイモン・フンスー)”の野獣のような存在感が
光ります。
シンケはアフリカで、猪や猿を捕獲するように網で捕らえられて船に乗せられ、
妻と子供と生き別れに。
奴隷は獣と同等かそれ以下。
船底に鎖で何人も数珠繋ぎにされ、恐ろしい暴力を受け、食料が不足したら、
鎖に数珠繋ぎのまま重石をつけて海に投げ込まれる。
奴隷は単なる積荷に過ぎないのです。
この辺りの映像は壮絶を極め、奴隷制度、アフリカから黒人は売られて来たのだろう、
とは、思ってましたが、現実は想像を超えていました。
映像で見てこそ迫る現実でした。
奴隷運搬船「アミスタッド号」
その船に弦楽合奏団の美しく荘厳な演奏が響きます。
これは白日夢なのでしょうか?
(タイタニック号でもありますまい。弦楽四重奏団が乗船する余裕などあるはずもない)
奴隷を海に捨てて積荷を軽くしてた位ですから、弦楽合奏団を乗船させるなんて、あり得ない・・
観客へのサービスに過ぎません。
この芸術作品に見せようとする意図的な装飾?
(一服の癒しになったのは事実で、愉しみではありましたが、)
1997年(アメリカ)スティーブン・スピルバーグ監督作品。
史実に基づく良心的な作品。
裁判場面を中心に据えています。
若き弁護士にマシュー・マコノヒー。
最後に登場して大演説をする元大統領にアンソニー・ホプキンス。
ドリームワークスの第一号作品です。
スピルバーグだから完成させられ、一定数の観客は彼の作品なら観ます。
私もその1人。
映像にチカラがあり飽きることなく最後まで見続けました。
奴隷は解放されて、リーダーの“シンケ”はアフリカに返還されます。
しかし内戦の起こった祖国に妻子の姿はどこにもなく、
悲しい現実が待つばかりでした。