「フィクションにあるモーツァルトの真実」アマデウス Gustav (グスタフ)さんの映画レビュー(感想・評価)
フィクションにあるモーツァルトの真実
ピーター・シェーファーの戯曲の面白さが映画スケールに拡大して、ミロシュ・フォアマン監督が18世紀宮廷音楽の世界を贅沢に再現する。史実から飛躍したミステリー仕立てのエンターテインメントの音楽家映画で、モーツァルトの名曲の選曲から物語にリンクするオペラの舞台までが巧妙に練られている。まず交響曲第25番第一楽章で開巻するプロローグのミステリアスな導入部が素晴らしい。短調の強いリズムに合ったモンタージュとスリリングなタッチで観客を鷲掴みする。そして、父レオポルドとの葛藤をオペラ「ドン・ジョバンニ」に重ねたシリアスさと、義母のヒステリーをオペラ「魔笛」の夜の女王のアリアに合わせたユーモア。最後の「レクイエム」写譜と妻子が乗る馬車のカットバックと、多彩な味わいを駆使して、モーツァルトの音楽を存分に聴かせてくれる。サリエリが妻コンスタンツェから楽譜を預かり、名曲の数々に驚嘆し酔いしれる場面もいい。
モーツァルトの音楽に嫉妬するサリエリをF・マーリー・エイブラハムが見事に演じている。晩年の卑屈な老人の表現に、演技力を見せつける。比較されて分が悪いモーツァルトのトム・ハルスも名演まではいかないが、天才にある変人の部分を笑い声に象徴させていて好演。オーストリア皇帝ヨゼフ2世のジェフリー・ジョーンズははまり役で、周りのイタリア人音楽家もリアクションの演技が巧い。コンスタンツェの新人エリザベス・べリッジは特に可もなく不可もなし。唯一の不満は、父レオポルドのロイ・ドートリスだが、脚本自体モーツァルトの天才面の鍵を握る父を深く描いていないので仕方ない。
ただ、モーツァルトがレオポルドと夜の酒場で余興に耽る場面で、幼少のモーツァルトに似た少年のカットが挟まれていた。神童のモーツァルトが大人のモーツァルトを見てどう思うか、それが父の思いとするフォアマン監督の演出と勝手に解釈している。
G ussavさん
「ゴジラ(1954)」と「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」に、
共感ありがとうございます。
クリスマス・プレゼントを頂いた気分です。
この映画のBlu-rayを持っています。
とても興奮しました。
サリエリのモーツァルトへの嫉妬・・・一般的にはそう言われていますね。
モーツァルトの父親の亡霊はその時掛かるBGMが怖くて、
恐れ慄きました。
メリークリスマス🎅🎄🎁