「解説動画は蛇足そのもの」暗殺の森 只野京さんの映画レビュー(感想・評価)
解説動画は蛇足そのもの
まず本編と関係ない話になってしまうが、
劇場で観たときに町山某氏の解説が入った。
まず、これが結構長い。そして余計なのである。
映画本編の前後にこういった動画を挟むのは禁じ手だ。
町山氏の解説自体はとても分かりやすいのだが、映画がはらむ解釈の多様性を
妨害しているとしか思えない。とても残念であり、興行主は何を考えているのかと呆れた。
本編については、やはり解説のおかげで思考が誘導されてしまって
ニュートラルなレビューは出来なくなってしまったかもしれない。
臆することなく言うと、「内容」がいまいちだと思った。
確かに画面構成やライティングは引き込まれる作りだと思う。
「形式」は間違いなく計算された完成度の高い仕上がりだ。
「内容」がついていけなかった。
出会って2秒で合体みたいな展開がまず感情移入できない。
隣の部屋に奥さんがいるのに堂々と不倫する主人公に笑ってしまった。
細かい点では、来客の際に教授の妻が何故か奥さんの方だけ
コーヒーを入れて旦那には入れないだとか
もしかしたらイタリアないしはフランスの慣習なのかとか引っ掛かる。
本筋に影響のない描写なら未だ良い。むしろ町山氏の解説にもあった
「普通」になりたいという主人公の心理描写がもっと前面に出てこないと
何だかファシズムに踊らされてバイに戻って終わるという暗鬱で
幻覚的なサスペンスムービーだと感じてしまった。
個人的に何度も観たいと思う映画ではなかった。
強いて言えば音楽は良かったと思う。
繰り返しになってしまいますが、"個人"の感想が一意的にならないためにも
どうか映画評論家"個人"の解説を挟んだりするのだけはご勘弁頂きたいです。
名古屋での午前十時の映画祭では、町山智浩の解説はありません。この作品は予備知識無しで観るとなんのことやら分からない映画になりそうです。解説はあったほうが良いです。午前十時の映画祭では、難解な作品も上映されるので。
出会って2秒で合体! 大ウケです、少なくとも町山解説なんかよりずっと。
少し疑問なんですが、パンフを買う方々はこういう解説の部分を知りたいんじゃないでしょうか? 売れ行きに影響しないんですかね、町山ネタばらしは。