「内容はイマイチだが「エイリアン」と「ターミネーター」の監督らしさが随所に感じられるのが面白い。」アビス あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
内容はイマイチだが「エイリアン」と「ターミネーター」の監督らしさが随所に感じられるのが面白い。
「ツイスター」(1996年)は本作の構成を真似たのではないか。
技術職の男と、男勝りな妻が命知らずな冒険をする。物語のはじまりではふたりはぎくしゃくしているのだが、冒険の中でお互いを認め合う。
本作は海底に沈んだ原子力潜水艦の調査がミッションだが、海底に潜む未知の生物とのコンタクトがテーマとなっている。キャメロンが高校時代に書いた短編小説がもとになっているというが、善良な「エイリアン」のようなストーリーだ。「エイリアン2」(1986年)の次に撮った作品だから似ているのかもしれない。もしくはキャメロンの中でこのパターンがテンプレート的に持っていたのかもしれない。
潜水艦から核弾頭を奪う兵士とそれを阻止しようとする主人公、というプロットと、未知との遭遇を合体させるアイデアは斬新ではあるが、物語のベクトルが分散してしまっている感は否めない。海底の生物がいないほうが映画としてはうまくいっただろう。
ただし、本作のクリーチャーを表現する際に水の表現をILMのCG技術によって実現し、「ターミネーター2」につなげたという意味では、必要な要素ではあったのか。
本作が製作されていたであろう1988年はアメリカ経済が好調な時期だった。また、1989年は「インディジョーンズ最後の聖戦」や「バック・トゥ・ザフューチャー2」、「ゴーストバスターズ2」といった作品が公開されていた。今でも話題にのぼるエンターテイメント大作が公開されていた時期だったのだ。
本作もそんな時期に公開された楽しい娯楽映画だった。
が、
製作費104億円
興行収入130億円
意外と売れなかった。もしくは製作費をかけすぎたか。
いささか地味な位置づけではあるが、キャメロンとしてはそれなりに大切にしているらしくリストア版のプロジェクトも進んでいるらしい。