「忘れ去られた町」暗殺のオペラ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
忘れ去られた町
両親の故郷である町タラに呼ばれたアトス・マニャーニは、この寂れた町のいたるところに自分と同じ名を冠した建物、石像があることに驚き、招待した夫人ドライファの元へと急ぐ。実は彼女は父の愛人であり、父と同志であった3人、ガイバッツィ、コスタ、ラゾーリに会う。反ファシストの闘士として英雄となっていた父は息子と同じ名前。犯人はよそ者だとも、町の人だとも教えられていたが、徐々に父の素顔が浮かんでくる・・・
シェークスピアの劇「ジュリアス・シーザー」、「オセロ」、「マクベス」などにもヒントが隠されているし、3人の証言にはあやふやなところばかり。だんだん精神までもがおかしくなっていくアトスの様子と深まる謎が心地よく響いてくるのです。また小さな町にオペラハウスがあったりして不釣り合いなところもいい。
タラに到着した際には建物の映像はシンメトリーで美しく表現されているのに、終盤になるにつれ、暗くアシンメトリーに変化する。過去映像と現在の映像が混在し、主演のジュリオ・ブロージは36年の父と現在の自分の二役を演じていて、過去の3人も爺さんのままでややこしくなるのですが、父が赤いスカーフを巻いているのが唯一の判断材料。色々聞くうちに、36年には彼ら4人がムッソリーニを暗殺する準備をしていたのに、誰かが裏切り情報を漏らしたためにムッソリーニがタラを訪れなくなってしまったのだった。
真犯人に到達するのもアトス本人が精神的に追い詰められてしまったから・・・この不安定な感情も現在と過去が目まぐるしく変わるためだ。森の横を走っているといきなり赤いスカーフが現れるシーンが面白い。
しかし、エンディングを迎えると、実はこの町は無くなっていたのではないかと考えられるシーンもある。オペラハウスで唐突に演じられたとか、線路上の雑草などでそう考えさせられるのです。また、殺害前の4人が真相や計画を話し合っているときに、過去映像であるはずなのに町の屋根にはしっかりとテレビアンテナが立っているとか、アトスが一人芝居を演じているようにも思えるのです。そもそも静止した人々が多いこともおかしい。真実をしったアトスが妄想世界で演説しているような気もした・・・色んな考え方ができるますなぁ。