劇場公開日 1978年1月14日

「ウディの映画はジャズである」アニー・ホール あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ウディの映画はジャズである

2010年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

萌える

1977年アメリカ映画。93分。今年26本目の作品。ウディ・アレンの代表作の一つと言われる本作。いままで複数の方に勧められようやく観ることができたわけです。

内容は;
1,テレビにも出演するコメディアンの男は歌手を目指す女と出会い交際を始める。
2,順調に交際を続けていたが落ち着きたくない男と落ち着きたい女は、それで衝突することもしばしば。
3,女はLAからプロ歌手としてのオファーを受け、二人は別れるが男は彼女のことを忘れることができない。

まだまだ発展途上な男女が交際すれば得てして起こりがちな破局のシナリオ。そして、破局してからひきずるのは大抵男の方。そんなうじうじした男の神話的な姿をウディが演じれば右に出る者はいない。

物の見方が常に悲観的で、読んでる本は「死」に関するものばかり。しまいには女に最初にプレゼントした本まで「死」の本。恋情があるうちは女も笑顔でそんな男につきあうが、その情が薄れ始めるとその笑顔も愛想になっていく。そして女はある日何かがポンっとはじけたように我に返る。もう二人の関係が終わっていたことを。

男ならこんな戦慄を覚える天地逆さま現象を誰でも経験したことがあるのでは?ほんと上手に描いています、本作は。

そんな本作は言ってみればありふれた物語なのですが、ありふれてないのは、そんな男女それぞれの事情に関してほとんど踏み込んでいないところ。それぞれの事情を証明すればするほど泥沼になるだけだし、そこからどこにもいかない。本作はそんな泥試合は描かず、二人が一緒にいる時間を描くことにエネルギーを注いでいます。

そして、なんの腐れもなく二人はやがてあっさりそれぞれの道を歩んでいく。そんな二人の背中を想像するとなんか泣けて笑えてくるのです。

人生と言えばなにやら壮大な物語になってしまいそうですが、ウディの作品はそこまで威張らず、二人の日常の関係で起こる微細なケミカルリアクションを描いているのです。それは、まさしくジャズのように。

いや、いい映画でした。

あんゆ~る