「開き直り」アタック・オブ・キラートマト 完璧版 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
開き直り
”不朽の駄作”というキャッチ・コピーに釣られて鑑賞。
本作は脚本のコスタ・ディロンが高校生のときに東宝特撮の「マタンゴ(1963)」を見てキノコの怪物がありなら野菜でもいいだろうと「アタック・オブ・キラートマト」を書きました、ジョン・デ・ベロ監督はUCLAの大学時代にこのアイデアを基に短編の8mm映画を作ったそうです。怪獣やエイリアンものはHG・ウェルズ以来プロットはある程度フォーマット化しており、逃げ惑う群衆、無能な政府や軍隊、異端の学者と相場は決まっていますから主役の怪物を嵌めこめばそれなりのモンスター・パニックは作れます。元々アメリカのモンスターはミュータントもの、蜘蛛や蟻、蜂などが巨大化するパターンなら撮り易かったのでしょう、それでも学生の実験映画じゃ怪獣はおろか虫でも敷居が高いので身近な野菜にしたのでしょう。怪物とは真反対のトマトとは意外性はありますが牙もないトマトのままでは土台無理、植物でもせめてバラ怪獣ビオランテ位はやったらと思う所です。長じて映画化するに際して、見直すかと思いきやそのままの開き直り、風刺を交えたナンセンス・コメディに落ち着いたのでしょう。広告代理店いじりやニュースの被害者インタビュー批判はユニークですがホワイト・ハウスの陰謀やCIAはありきたりですね。
同じようなおふざけSFの名作「マーズアタック」ではファルセットで唄う「インディアン・ラブ・コール」が秘密兵器でしたが本作では金切り声の「Puberty Love(思春期の恋)」、レコードで退治するアイデアはどちらが先だったのでしょうかね、もっとも古典SFの「砂の惑星」では音声念力銃が出てきますから声が武器になるアイデアは古典的なものかもしれません。予算が無くとも知恵で勝負している優れたB級映画が無いわけではありませんから、端からダメ映画と決めつけてここまで手を抜く必要は無かったでしょう、どういう訳か続編も作られたようですからそちらでは少しはプロットを練っているのでしょうか、気にはなりますが正直もう十分といったところです。