「恐怖と狂気の果てを見た」悪魔のいけにえ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
恐怖と狂気の果てを見た
1970~80年代は後世に残る人気ホラーが続々誕生。
『オーメン』『ゾンビ』『ハロウィン』『13日の金曜日』『死霊のはらわた』『ポルターガイスト』『エルム街の悪夢』…あなたはどれがお好き?
中でも本作は、金字塔に挙げられる。
トビー・フーパー監督による1974年作。
テキサスの田舎に帰郷した若い男女5人が遭遇する惨劇、恐怖、狂気…。
開幕から不穏な雰囲気を漂わせる。
その田舎町で続く墓荒らしのニュース。
脂肪がゼリー状と化した死体。
本編冒頭のハイウェイに横たわるアルマジロの死体…。
5人はヒッチハイカーを乗せる。相手や自分の身体を切り付けるイカレ野郎。
途中、ガソリンスタンドに立ち寄る。バーベキューもやっているという一見親切そうな経営者だが…。
思えば、この時から目を付けられていたと言えよう。
目的地の廃屋。
その少し離れた所に、一軒家。
誰も住んではいないだろう。中は廃屋同然で薄暗く、不気味な蜘蛛が蠢き、動物や人間のものと思える骨が…。
それは突然襲い来る。
殺人鬼、レザーフェイス!
人の皮で作ったマスクを被った大男。
うめき声以外喋らず、そもそも意思の疎通や人の感情などあるのか…?
代名詞とでも言うべきチェーンソーで襲撃。よくジェイソンと間違われるが、チェーンソーで襲い掛かって来るのはこのレザーフェイスである。
そのジェイソンやブギーマンなどマスクを被った殺人鬼の元祖とも言えるだろう。
一人、また一人と殺されていく。
逃げ惑うヒロイン。
チェーンソーの音とヒロインの絶叫で、迫真。
何とかガソリンスタンドに逃げ込み、助けを求めるが…。
ここから衝撃の事実の連続。
レザーフェイスとガソリンスタンドの経営者、さらにはあのヒッチハイカーまでもが家族。
墓荒らしも彼らの仕業。
戦慄の殺人ファミリー。
イカレ、クレイジー、キチ○イ、サイコ…それらに当てはまる言葉を集めてもまだ足りない。
一体彼らは何者…? 凄惨な行為の目的は…?
人の恐ろしさ、おぞましさ、悪しき心、病んだ心の成れの果てなのか、
この殺伐としたテキサスの田舎町が彼らを駆り立てたのか。
いや、理由など皆無に等しいのか…?
効果音のようなBGMが不穏な雰囲気をさらに醸し出す。
手持ちカメラ風のざらついた映像があたかもドキュメンタリーのようなリアリティー。フェイクドキュメンタリー・ホラーの先駆けでもある。
そして何と言っても、トビー・フーパーの演出。商業映画デビュー作であり、最高傑作。
本作のマスターフィルムがNY近代美術館に永久保存されているのは有名な話。もはや芸術レベル。
シリーズ化されたが、他のホラーと同じく質落ちの道へ…。
マイケル・ベイ製作によるリメイク版はなかなか悪くなかったが(ジェシカ・ビールがセクシー!)、やはりこの第1作目が格別。
ショッキングなラストもインパクト大。
恐怖と狂気の果てを見た。