劇場公開日 1948年7月

「フランス恋愛映画の矜持を感じさせるマルセル・カルネの秀作」悪魔が夜来る Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0フランス恋愛映画の矜持を感じさせるマルセル・カルネの秀作

2020年5月15日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

マルセル・カルネ監督の純然たる恋愛映画。一途な愛に没入し精神を高めようとするフランス人の恋愛至上主義を謳ったロマンティックな作品。名画「天井桟敷の人々」に共通するカルネ監督の演出には、人間の声と情感を艶やかに表現する大人の知性を感じる。恋愛小説を創作する大家に匹敵する力量が素晴らしい。ジャン・コクトー監督の「美女と野獣」に並ぶフランス映画の古典にして、主演のアルレッティの美しさが記録された希少価値が高い。ナチスドイツの占領下で創られたレジスタンス映画の背景がありながら、それを恋愛映画に内包する時代の証言としても特別な意味がある。政治的な問題を恋愛で語るフランス映画の矜持には、感心と羨望の気持ちを抱かざるを得ない。
  1984年 8月21日

Gustav