青いパパイヤの香りのレビュー・感想・評価
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映像で魅了する、女性の物語
この作品は、作中の時代の女性の生き方(愛)についての物語だった。
主人公は十代から始まるムイだが、ムイが奉公する先の母、祖母、とムイが将来たどるかもしれない女としての未来まで描いている。
ラストでムイは結婚して子どもを授かるが、その先には一人苦労しながら子どもを育てる母親があり、更にその先には夫に先立たれて孤独に生きる祖母がある。
もちろん全ての女性がそうではないし、現代の感覚にはそぐわない感性も存在するけれど、あくまで作中の時代のことととらえつつも、全然的外れってこともないあたりが面白い。
幾人かのレビューアーさんも書いているように、この作品の魅力はセリフに頼らず映像で物事を伝えようとするところだろう。
つまり、感覚で、感性で観なければいけない。
映画にとって一番はやはり映像だ。画が魅力的な作品はいい。
湿度が高そうな暑さが伝わってくる色彩感覚もいい。指先で虫を、パパイヤの種をいじるシーンも印象的。
メチャクチャ面白いということはないけれど、実に「映画」している作品で、良かった。
耽美
ずっと美しい絵画を見ているような感覚。陰影、インテリア、植物、生き物のカットイン、どれもそこで生活している人を美しく彩るような妙があった。
音楽も環境音もベトナム語も、耳に入ってくるもの全てが心地よい。
性的な表現なんて一切ないのに、生活の描写に湿度を感じて色気がある。
ストーリーはよくわからんかった。
美しさとリアリティとドリーミィ
時々映る、パパイヤの木や、虫や、主人公の汗、などから、
蒸し暑いベトナムの世界を想像することができて、まるでベトナムにいるような気持ちになりました。料理のシーンもとても貴重に感じた。映像がすごく美しかった。
また、奥行きを感じる撮影技法とユニークな2人の兄弟の登場は、日本の名監督、小津安二郎の映画”お早う"を彷彿させた。
しかしこの映画は美しいだけではなかった。
音楽の使い方がすごく斬新でした。
恐怖をあおるような音楽が時々流れます。
そしてすこしエロティックでもありました。
しかも、エロティックを、
ストレートに表現していなくて、
そこもすごくよかった。
わたしは好きな映画でした。
エッチです
卓越した隠喩法と秀逸な細部の描写によって彩られた完成度の高い作品です。
「描かずにして描く」――そのようにして描かれた性は、また、生をも表現しているのかもしれません。
主人公ムイの肌にうっすらと浮かぶ汗が印象的です。それはベトナム・サイゴンの湿度や空気を感じさせる(僕はサイゴンを2度訪れました)と同時に、20代のシーンでは健康的かつ艶かしい女性のエロチシズムを感じさせます。抑制の効いた演出が、かえって想像力を刺激します。
物語の前半は、南の国の、ある一家の生活をのぞき見るような感覚で作品を鑑賞しました。
後半はセリフが極端に少ない。
考えるのではなく、観客が感じることに重点を置くようにつくられているのでしょう。
静かに語りかけてくる名作。
起伏に富んだストーリーでないにもかかわらず、退屈させずに見せる、監督の並々ならぬ技量に感服しました。
ただ一点、肝心のパパイヤ(庭になっていたもの)が何故かそれほど瑞々しく見えなかったのが少し気になったけど、撮影地がパリということだから、思ったようなものが用意できなかったのでしょうか。
それにしても少女時代のムイは、とても可愛いですね。
追記
もしやと思って鑑賞後に調べたら、やっぱり、本作のトラン・アン・ユン監督、『ノルウェイの森』を撮った人だったんだ。
こんなに素晴らしい作品をつくる監督だから、春樹さんも映画化を許可したのだろうな。
【仏蘭西領ベトナム、サイゴンで”青いパパイヤ”が、成熟していく様を、気品溢れる劇中曲、映像美で描き出したエロティシズムが仄かに漂う作品。】
ー 1951年サイゴン。裕福な一家に、10歳の少女ムイが使用人として雇われる。その家には頻繁に家を留守にする父、そのことを祖母に責められる母、2人の息子、孫のトーを失い引き籠る祖母がいた。
そんな中、年配女中、ティーに教わりながら家事をこなすムイは、ある晩、長男の友人クェンに恋心を抱き…。ー
◆感想
ー ベトナムは、今でも特に北部では、フランス領であった気配が、特に食文化で感じられる国である。ー
・今作での”青いパパイヤ”とは、若くしてサイゴンの資産家の奉公人として雇われたムイの事であろう。
そして、彼女は資産家とは言え、若くして娘トーを失った、放蕩息子の姿や、その息子の嫁を責める祖母の姿、後継ぎになる筈の悪戯好きの息子二人の姿を見ながら、先輩女中に、料理の仕方などを教え込まれて行く。
ー 前半と、後半”青いパパイヤ”を使ったサラダが描かれる。
”残った実の部分は捨てても良いよ”と言われながらもムイは、その種を愛おし気に触るのである。
因みに、日本人にとってパパイヤとは、果汁を飲むモノであるというのが一般的であるが、今作で描かれているように、若いパパイヤの実を千切りにして、そこに文旦のような、タンゴリン系ではない柑橘を塗し、熱した油を適量振りかけたサラダは実に美味いモノである。ー
・今作は、ムイが奉公した裕福な家が抱える哀しさを淡々としたトーンで描いて行く。
ー 気品高い、劇中に流れる東洋風味溢れる管弦楽がその味わいを深めている。そして、彼女がある日目にした長男が連れて来たクェンという若き青年・・。-
<そして、10年後に時は移り、ムイはクェンの家で、働いている。だが、幼い頃からのムイを見ていたクェンは・・。
今作は、静謐で気品高き、エロティシズム溢れる映画である。>
All these French people…
ベトナムではなくフランスのセットなのか。
他の映画でも、ベトナムの富裕層のベトナム戦争以前の優雅な暮らしを見たが。深く湿度の高い緑、植物やカエル、虫たちが色鮮やかに、水を滴らせ、生命力を謳歌している、その自然というにはあまりにも人間の生活空間に溶け込んだあり様が、素敵なんだけど、フランスの人がノスタルジックに感じるベトナムなのかなと思い、一歩引いた感じで鑑賞した。
つがいのコオロギ、青いパパイヤのソンタム風のサラダを作った残りを割ると真っ白い種が卵のようにびっしり、ゴムの木か何かの樹液もしたたり、カエルは艶々、植物は常に湿気を帯び滴を垂らし、人がまた水をやり自然というにはあまりに近く混在する生あるものたち。
記録として素晴らしいかと思ったけど、フランスのセットだった。
女性が成長していく様にしてはあまりに受動的で奥ゆかしく、フランスの目で見た女性像かと勘繰りたくなる。
不快な作品ではなく、むしろ吸い寄せられるように丁寧に美しく撮られたシーン、音楽と周りの音に耳をそばだてた。
途中飛行機の爆おみたいな大きな音が、なんとも不安にさせる。
美しい映画である。
老女となった想い人に心を寄せ遠くから見守る老人が素敵であった。
映像美、音の不思議、自然の賜物、ムイや全ての人が優しくdecent である。ベトナム映画なのかなて、少しモヤモヤするけど、美しい。ベトナム人にもこのようなノスタルジーは普遍的なものなのかな。とにかく美しい。
この映画をベトナム中産階級の日常として見る?
1951年の10年後と言えば、1961年。
絶対に忘れてはならないのは、やっばり、ベトナム戦争でしょう。
映画の中に突然ゴオーと雑音が2回入る。
流れる音楽もベートーヴェンの月光をメインにすえるが、ほとんどが不協和音ばかり。取るに足らない話の中にこれからやって来る地獄が垣間見えると僕は感じた。
但し、彼はフランスに亡命している訳だから、南ベトナム共和国を指示する立場だと思うが。
蒸し暑くなるような空気感が伝わってく
ベトナムには実際に行ったことがあるが(2010年代前半)、バイクの音がやかましく、にぎやかだったと言う印象がある。ただ、この舞台となった時代にはその喧騒も全くなく、静かだったに違いない。
画面から蒸し暑さが伝わってくる。しかも、この映画のタイトルにもなっているように南国独特のフルーツの香りまで漂ってくるようだ。実際にはフランスで撮影されたようであるが、セットの完成度が高いと言うことでしょうね。
物語は、1人の少女を通して片思いから恋愛へと発展しく過程がみずみずしく描かれて、非常に爽やかな印象の映画だ。
言葉は不要不急。
蒸し暑い、眠りがなかなかやって来ない夜。時々涼しげな風が吹き込む。
風があるから耐えられるわけではない。この蒸し暑さに・・・・
セリフがほとんどない映画。いや、人の暮らしに言葉など必要ではない。男も女も交わす言葉で傷つけ傷つき淡々と生きている。そんな現実をそのまま映画にしてしまっている。
観るものを惹きつけ思考速度を加速させてくれた。
軟弱で疲れる今の世間は影であれ日向であれ不満に満ち溢れた言葉だらけだ。
誰もが主張できるのは悪いことではないが、周辺の人々はそんな言葉に耳をかさない。
同じ程度の辛さに共感し、特出した幸せや哀しみは排除し異端者として侮蔑のまなざしを向けるだけだ。そんな醜さに気づきもせず、人に与えられることが幸せだと思ってしまっている。浅ましいくも卑しい。そんな心根を嘲笑うかのようにこの映画は作られたのではないかと思ってしまう。
心の中の邪悪な気分が邪な行動を推進させようとしたら、
周りの人々に自分のすべてを与える様にしよう。
南国に憧れる。旅行気分になります。
良いなー。
いかにもアジアンな感じがすごく良い。
木造の快適そうな家。息づく植物と動物たち。裸足の人々。
子どもの世界を切り取って巧みに表現していたのも個人的な評価のポイント。そうそう。ああやって虫を苛めたくなるんだよね。
大量生産・大量消費の暮らしより
この家の暮らしの方が豊かに見えました。
癒されました。
旅行に行けなくても行けない人は
是非とも本作でベトナム旅行気分をお楽しみください。
ベトナムにステイしているような気分になる
リゾート地どころか、ムイが奉公している家しか出てこないのだけれども。
窓を開けはなして、暑苦しい風に吹かれながら、ホームステイしている異邦人としてだけれども、そこにいるような。
カメラワークが、人間を映し出し、物語を追うだけでなく、
手元や、家に生息するものを丁寧に映し出しているからだろう。
そして、
音が、起こっている効果音を使っている場合もあるが、基本はそこに息づく生物の鳴き声等が常に鳴り響いていることが多いからだろう。
勿論、いわゆる”音楽”も奏でられる。が、雇用主を風流人や音楽家として設定しているから、心地よいベトナムの音楽も、西洋クラッシックも生活音となる。
前半(全体の2/3)は、そんなベトナムの暮らしを垣間見ることができ、ゆったりとした気持ちになる。
後半(全体の1/3)は急展開。あれよ、あれよと『マイフェアレディ』のような展開になる。そして『エマニュエル夫人』を思い出させる映像も。
そんな変化に驚いているうちに、エンド。
そのような展開にした監督の意ー熟しだすとあっという間?-も図りたくなるが、もったいない気もする。
好みは分かれるであろう映画。
東洋のパリ
ベトちゃんドクちゃんを分離手術した先生に面会に行ったことあるのでレンタル。
統一北ベトナム政権は、南ベトナムの軍医に執刀を依頼した。南ベトナム軍は米軍と一緒に自分のふるさとに枯れ葉剤を撒いてしまった立場なんです。
「傷だらけで統一を果たした南北が一緒にベトちゃんドクちゃんの治療に取り組む」 ー
これって・・・民族の再生を祈る悲しみの共働。深き人智だと思った。
もう少しベトナムを知りたい。
中国語は6音節だけどベトナム語は超絶の9音節。
歌うように喋りますね。
僕の仕事場には語学実習生が大勢いるんですよ。
シンチャオ ベトナム、 こんにちはベトナム
トンニャット ベトナム、 統一ベトナム
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湿度
とても美しい作品です。
青パパイヤを大きめの包丁でトントントントンたたいて千切りにするところとか、どれも印象的なシーンばかり。
ひとりの女の子がお手伝いさんとしてやってきてから、成長して結婚するまでのお話。彼女の住み込み先の人たちとの関係が奥ゆかしく描かれています。
映像もとても美しくて、彼女の純粋な人物描写がまたキレイ。
私のベトナムの空気感はこの作品によって形成されていたのだけど、フランスで撮影されたんだと知ってびっくり。
湿度のある作品で、女性にお薦めです。
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