愛欲(1937)のレビュー・感想・評価
全1件を表示
泣く男
モテモテの色男(英題Lady Killer)も妖婦にかかると「恋は盲目」になってしまう。あんなおセンチなジャン・ギャバンは初めて見ました。やはり人は見た目なのですね。
本作はさらに訴えます。人は、他人の判断基準として、(軍人とか、医者とかの)肩書きしか見ていないということを。オランジュの食堂の女房は、ジャン・ギャバンが軍人を辞めた途端に随分素っ気なくなってしまったし、新たにやって来た軍隊行進の「影」しか映さない演出は、とても象徴的でした。
これに限らず、凝ったカメラと演出が突き抜けている作品です。パリ ビュット・ショーモン公園での逢瀬の場面のギャバンの高揚感、パトロンと鉢合わせの修羅場での虚勢と失望、そして終盤店での再会の前、シェード越しにギャバンが一瞬怯む描写と暗い部屋の奥に静かに座っているバランの対比。グレミヨン監督のセンスが冴え渡ります。
男たちを翻弄するバランの意図がよく分からないところは確かにありますが、バンプはこれくらい謎めいていた方がいいんです。
コメントする (0件)
共感した! (0件)
全1件を表示