愛と喝采の日々のレビュー・感想・評価
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女性の人生の選択を真摯に見詰めた美しいバレエ映画
奇麗に纏った作品で、見所もバレエシーンとシャーリー・マクレーン、アン・バンクロフトの二大女優共演の魅力十分の女性映画である。原題の『The Turning Point』とは分岐点の意味だが、ここでは中年を迎えた二人の過去の選択を振り返ることから、もう一度人生を見なおし、前向きに生きて行く未来を見据えている。マクレーンはプリマ・バレリーナの華やかな職を辞めて結婚し、三人の子供に恵まれ幸せな家庭生活を送ってきたが、バレエを途中で諦めたことには今でも後悔の念がある。片やバンクロフトはバレエ人生を続け名声を得たが、肉体的には若い頃のダンスは出来なくなっている。仕事が結婚かの選択に迫られる女性の対照的な生き方の、そのどちらにも満足の行く答えはない。仕事人間で家庭を蔑ろにしても世間体では評価される男性には理解できない、女性だけの苦悩である。その二人の友情がお互いの嫉妬と羨望により、ぶつかるところがある。マクレーンの娘レスリー・ブラウンがバレエ公演で成功を収め喝采を浴びたあと、ホテルの屋上でマクレーンとバンクロフトが取っ組み合いの喧嘩をする。このシーンに女性たちが抱えた悩みや痛みが集約されていた。そして、若い世代へのメッセージとして、後悔のない人生などない、けれど納得できる人生を送るために悩み苦しむことは、人生の敵ではないことを教えてくれている。
ハーバート・ロス監督はバレエ出身の異色の監督であり、その演出は丁寧で正攻法である。ただし、人物のカットになると、アングルの単調さと均一的な配分が時に平坦な印象を与える。二人の衝突シーン以外にもドラマティックな演出を見せても良かったのではないかと思った。ロバート・サーティズの撮影は全体的に奇麗で、特にバレエシーンは素晴らしい。シャーリー・マクレーンは久し振りのカムバックで適役のいい演技を見せてくれ、バンクロフトは最適の役ではないが演技力でカバーしている。新人ブラウンは細い体で綺麗なダンスを披露するが、演技力に物足りなさを残す。ロシア人ダンサー、ミハイル・バリシニコフは身長は高くないが跳躍力が素晴らしく、流石にバレエは見事に尽きる。バレエを通して、女性の生き方を真摯に描いた正直な映画だった。
1978年 10月25日 飯田橋佳作座
圧倒的な感動に包まれて号泣しそうになりました
1977年の「愛と喝采の日々」と1983年の「愛と追憶の日々」
邦題が似ているし、どちらもシャーリー・マクレーンが主演なので混同されがちです
そして本作の方が忘れ去られがちの作品になってしまっています
でも本作は誰がなんと言おうと名作です!
アカデミー賞に10部門もノミネートされました
でも結局その年は「アニー・ホール」が圧倒的に強くて結局無冠でした
けれども本当なら何部門も受賞しておかしくない作品です
前半こそ、少し退屈するかも知れません
でも後半になるとその前半の伏線がどんどん活きはじめて終盤は圧巻の展開となります
特にパーカウンターでの口喧嘩から、表にでてパタパタと二人で叩きあって、大人の女二人の本音をぶつけあい、しまいには笑い合うシーンは名シーンとして、あなたの心に長く残るものになると思います
確かにバレイの映画です
でもそれだけがテーマではありません
女性の一生、人生の分かれ道、女どうしの友情、女としての自分、母としての自分、娘の大人への成長、母と娘の心情のすれ違い、夫婦の絆
そういったことが普遍的な物語となっているのです
だから胸を打つのだと思います
現代では仕事に真剣に打ち込んでいる女性は普通のことですですから、この物語はより多くの人の心に刺さるものになっていると思います
シャーリー・マクレーン 43歳
「アパートの鍵貸します」は26歳の時の出世作
それから17年ですから、劇中の彼女がプリマだった頃からの時間と同じくらいです
アン・バンクロフト 46歳
「ノックは無用」は21歳の時のデビュー作
シャーリー・マクレーンより年上なのに彼女の体型や美貌は、バレイの現役スターとしての説得力が十二分にある輝きです
しかし、中盤ともなると年齢相応の衰えもまた説得力があります
潮時を知り現役を去れと宣告され、そしてまた長年の金持ちのの後援者の初老の男との不倫も終わってしまうのです
懸命に働き続けてトップランナーでいたのに、一体自分には何が残ってるいるのか?と虚しさを味わう様は残酷です
劇中では田舎の地方都市でバレイ教室をしていても、3人もの母となりもう体型が崩れてしまって中年女性となったシャーリー・マクレーンとの対比が効いています
もちろんバレイシーンも、公演シーンや練習シーンまでどれも圧巻です
素人目でも物凄いものだと一目でわかります
肉体の芸術だと納得です
男前で女たらしのユーリ役はミハイル・バリシニコフという世界的な名ダンサーだそうです
娘のエミリア役のレスリー・ブラウンの美しさは特筆もの
透き通るような白い肌とはこのこと
幼少期からバレイの鍛錬をしてきた女性特有の細い均整のとれた骨格
大きな突き刺すような青い目
じっと見つめていたい磁力を発しています
記念公演で大成功をおさめ、なんどもカーテンコールに応える彼女
それを見守る彼女の母とその元ライバルにして一番の親友の女二人
自分たちの時代から、新しい世代へのバトンは受け渡され、新しいスターが誕生したのです
すべてが終わり客席もはけて、真っ暗なステージでその二人は真の友情を噛み締めて肩を抱き合うのです
原題はターニングポイント、人生の分かれ道
どちらが正解とはわからない
どちらが勝ったとも負けたとも言えない
それぞれの道を一生懸命に生きてきた
二人には友情だけが残り、次世代へのバトンが渡せたのです
ディーディーには、今はまだ野球に夢中な男の子も、こましゃくれた次女もいます
きっとこの子どもたちも期待に応えて育って行くに違いないのです
圧倒的な感動に包まれて号泣しそうになりました
名作です!
ミハイル・バリシニコフのバレエ
アメリカに住む叔母から「大好きな映画」と勧められていた。やっと観る機会を得た。
叔母と感想を言い合いたいけれど、今年アメリカの老人ホームに入所し、もう意思の疎通はできなくなってしまった。残念です。
ストーリーはともかく、ミハイル・バリシニコフのバレエをふんだんに観ることが出来て幸せ!
今の時代では笑い話のようだが、当時は女性にとって「結婚を取るべきか...
今の時代では笑い話のようだが、当時は女性にとって「結婚を取るべきかキャリアを取るべきか」をテーマとしたこのような映画が作られる時代であったのだ。
人生の決断は難しいが、結局何が幸せなのかは本人次第なのだろう。母娘...
人生の決断は難しいが、結局何が幸せなのかは本人次第なのだろう。母娘関係、若かりし頃からのライバル関係、いろいろな感情が込められた女性の共感を得られる映画だったと思う。バレエシーンも素晴らしくそれだけでも堪能出来る。
もしあのとき違う決断をしていたならば
総合:65点
ストーリー:65
キャスト:70
演出:65
ビジュアル:70
音楽:
今まで懸命に目標に向かって努力して、それで順調にいってきて何とか将来が開けそうになったとき。そのときに迫られる、家庭をとるか仕事をとるかの選択。家庭に特に不満もなく、それなりに幸せ。でも、もしあのとき違う決断をしていたならば、いったいどうなったのだろう。そんな経験は誰にでもあるはず。特に同じように努力していた友人が、現在その世界で脚光を浴びていたならば。それは脚光を浴びている友人にも当てはまる。もし幸せな家族を持っていたならば、いったいどうなっただろう、と。
長い年月を経て、そうした二人の複雑な思いが静かに、だけど徐々に募りぶつかりあい、そして衝突する。少しずつ心の奥底に溜まっていたわだかまりが、一気に溢れ出て噴火する。その後は今までの感情のもつれが嘘のようにすっきりとし、新しい世代が新しい人生を歩んでいく姿が瑞々しく描かれる。
そんな物語はよくまとまっていたし、二人の過去と感情がわかる。悪くはないのだけど、どうにもならない過去にこだわり続けて、ちょっと退屈でもあった。二人はもうあのときに選択の決断をしてしまった。今更どうにもならないのだから。だから娘が自分の新しい世界を歩み始める描写があって良かった。
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