「こいつぁ~ヘモ(痔)だな。痛いだろうから屁もこけない」雪に願うこと kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
こいつぁ~ヘモ(痔)だな。痛いだろうから屁もこけない
「ばんえい競馬」なんて知らなかった。馬だってでかい!決着は鼻じゃなくてソリの最後尾だとか、興味深いウンチクもいっぱいあった。そんな馬たちの調教シーンでは、朝もやたちこめる中で馬の白い鼻息や地面から立ち上る湯気が幻想的で、生命の息吹さえ感じることができた。失意のどん底であったはずの矢崎学(伊勢谷友介)も生きることの喜び感じ取ったに違いありません。
会社が倒産。借金で首が回らなくなったキャシャーンに唯一残された武器は捨て身技「生命保険」だったのですが、自己破産申告書をつきつけた偉大なる指揮者の息子だって、一緒にいい思いも経験したこともあって、最後には情けをかけてくれたように思います。地道に生きていけば、いいことは必ずやってくる・・・世の中、捨てたもんじゃないよと訴えかけてきたような気がしたのも、厳しい冬の大地だからだったのでしょう。
やはり一番いい演技だったのは佐藤浩市。弟に対しては暴力も振るうが、自分の力で厩舎を守ってきたという自尊心と、馬にだけは手荒なことはしないという信念があった。「勝たなきゃダメなんだ」と女性騎手牧恵(吹石一恵)に激を飛ばすシーンでも弟への愛が感じられるのです。男はやっぱり長男がいい。こんないい男のところへ嫁に来てやってくださいよ(自分のことではない)とキョンキョンに言いたくなってきます。
さすがに伊勢谷の演技はいまいちでしたが、小学校校歌を歌ってばかりいた山本浩司が良かったですね。山下敦弘監督作品以外では初めていい演技を見たような気がします。その他、気になる登場人物が何人もいたのですが、なぜか中途半端でした。どうせならそうした人物描写は切り取ってしまったほうが良かったのでしょう・・・ストーリーは素晴らしいのに、いい俳優を使いすぎたためちょっと惜しい作品になったかも。
【2006年6月映画館にて】