「青春のゴツゴツした思いが結実した傑作」はつ恋(1975) mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)
青春のゴツゴツした思いが結実した傑作
75年東宝製作 小谷承靖監督、仁科明子、井上純一主演。
公開時に見て以来、DVDを購入して、ようやく見た(VHSで一度も発売されてない)。
公開時、日本映画的な湿った感覚のない、洒落た映画で、それでいて鮮烈な印象があった。今から見るとツルゲーネフの原作の設定なので、かなり日本にはありえない話。演技も当時は気にならなかったが、見直すと見ていてハラハラするほど臭い演技が散見する。
でも、この映画は今見直しても傑作だと思う。仁科明子の初々しい美しさ、岸田森たち取り巻きの妙。二谷英明が絶対逆らうことのできない父親を好演。音楽をフランス映画「冒険者たち」でも使われたコーラスグループの音楽を使ったりして、日本映画っぽくないややもすると臭く浮つきそうな設定もうまく見せている。
最初ゆったりした展開から、後半、特にラスト近くからの畳み掛けるような映像の流れが素晴しい。あとで考えると変と思える設定ながら、一気に見せる。衝撃的で、青春の繊細で傷つきやすさがうまく映像化されている。前半の甘味な味わいから、後半の生々しい血のイメージへ(カマキリの共食いシーンもある)、そして冒頭とラストの井上純一の無精ひげの違和感(まったく似合わない!)も含め、青春のゴツゴツした思いが結実した傑作。
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