「誰か映画につきあってください」疾走 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
誰か映画につきあってください
痛い、痛すぎる、心の叫びと運命に翻弄される孤独な少年と少女の姿。こうした映画を新年早々観るものではないのかもしれないですけど、現実にも起こり得る幼い心の闇の部分を体感してきました。人間の醜い部分、残虐な部分を、差別・イジメ・放火・殺人といった事件を通して胸を抉られるような思いにさせてくれたのです。
監督はSABU。『ホールドアップ・ダウン』での失速感に失望していたため、一抹の不安を覚えながらの鑑賞となりましたが、これは凄い映画でした。これまでずっとオリジナル脚本で勝負してきたSABU監督ですが、重松清の原作に惚れこんで初めて原作の映画化にチャレンジしたとのことです。原作者さえも想像の世界だった“浜”と“沖”に隔てられた地域。惚れこんだ執念でロケハンし、美しさと暗さが共存する映像美を醸し出すことができたとのだと思います。また、冒頭からシュウジの心を代弁するかのようなナレーションが流れるのですが、彼自身をを第3者のように語り、「これは誰の言葉なのか?」と物語に惹きつける手法も面白かったです。
子供の頃から憧憬の念を抱いているヤクザの情婦アカネ(中谷美紀)。少年シュウジとの運命的な再会シーンでは泣かずにはいられなかった。「あぁ、俺も・・・」などと不埒な考えも少しは沸いてきましたけど、聖母のように暖かく抱きしめてもらいたい気持ちでいっぱいになりました。それだけ世の中に絶望したシュウジに感情移入してしまったようです。ジャニーズだからといってバカにはできません。アオォーン。
多分原作は素晴らしいのだろうと想像できます。問題は子役たちの演技力の無さ。主人公シュウジの手越祐也はまぁまぁの出来でしたけど、他は台詞棒読み状態でした。そのせいで大人たちの演技(特に中谷美紀)がとてもよかった。平泉成だけは子供の演技にちょっと同化してしまったような気もしましたが・・・
その原作を読めばすっきりするのかもしれませんけど、神父が少年を救えなかったのは自分が背負った過去の罪のためなのでしょうか。それとも弟と対面させたときに「お前は俺だ」という言葉に我を見失ったからなのでしょうか・・・とにかく自殺と殺人とを天秤にかけられるような内容に後頭部を殴られたようなショックを受けてしまいました。