樹の海のレビュー・感想・評価
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死臭漂う森林浴。もっと暑い時期に観ることができたら、最高だったかもしれない。
自殺の名所、富士山麓に広がる青木が原樹海。ここを探索して映像化したといえば、川口浩探検隊がもっとも有名であろうか。山梨に住んでいる頃、探検隊のバイトの話もあったくらいだ。何しろ年間数十体の遺体が発見されるほどの自殺の名所なのである。一旦奥の方まで迷い込んだら、二度と戻ることができないと言われるほど大きな原始林。数回訪れたことがあるのですが、10数メートル進んで小さな洞穴を見ただけで気味悪くなって逃げ出したものです。
この映画は樹海をモチーフにした4つのエピソードから成っています。1.暴力団にはめられ樹海に遺棄された萩原聖人。2.町の金融屋に追われていた女性が自殺目的で入りこんだ話。3.自殺した女性の生前の謎を追う探偵。4.ストーカー行為で聴聞委員会にかけられた女性の話。この4つのストーリーは微妙に重なってはいるが、ほぼオムニバス形式となって独立している。4つの内3つが何らかの犯罪に絡んでいるけど、基本的には人間本来の善の姿を取り戻し、簡単に死を選んではいけないのだと主人公たちが心理変化していくプロットとなっています。
今までの樹海を扱ってきた映画、テレビは、サスペンスドラマを中心に、「心霊」「恐怖」「探検」などといった特定の要素しか表現していなかった。これは、もちろん自殺者が多いということが前提となっているものだ。しかし、この映画においては、製作意図が「自殺なんかをするんじゃない!」と訴えるテーマからスタートしたものであり、神秘的な緑の映像から発せられるのは、「ここが人間の死に場所などではない」ことを木々が我々に伝えてくるかのようだった。
ストーリーでは、3つ目のエピソードが居酒屋中心となってしまい、やや冗長気味になってくる。しかし、これを次の井川遥のエピソードによって心臓を鷲づかみにされるかのように感動させてくれるのです。この功労者は大杉漣。痴漢に遭った女子中学生に優しく接する彼の演技にノックアウトされました。episode3が無ければ(もしくは簡潔だったら)満点にしてもいいな・・・
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