「美しき「絵」の映画。ストーリーは・・・」雲のむこう、約束の場所 葉読五式さんの映画レビュー(感想・評価)
美しき「絵」の映画。ストーリーは・・・
本作は、「ほしのこえ」から「天気の子」まで続く、美しく儚さもある新海誠作品の「絵」が如実に出ている作品であった。監督の劇場作品で、初めての長編作品である本作だが、前作に引き続き、ノスタルジーを感じさせる描写が書き込まれている。降り出す雪。空を舞う航空機の美しさは20年近く前でありながら今の作品にも見劣りしない美しさだ。もちろんただ絵が美しいだけでなく、その作画を存分に生かすカメラワーク、構図で撮影されている。尾を引く飛行機雲と、異質にそびえたつ塔のカットは衝撃的な美しさがあった。
しかし、その絵に対してストーリーは微妙なところが多い。本作は前作「ほしのこえ」と同じくかなり壮大な世界観のSFなのだが、前作があえて深入りしすぎないことで、ストーリーに悪影響を及ぼすことなく、作品の魅力を高めていたのに対し、本作は設定に中途半端に入ってしまったので、モヤモヤしたものが残ってしまった。あれは何だったのか?あれはどういう意味だったのか?と気になってしまった。壮大な設定を生かせてなかったというのが正直なところだ。主人公達の行動にもところどころわかりにくい点が多く、世界観にうまく入り込めないまま終わってしまった。
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