「新海誠監督の作家性が滲んだ切ないSFジュブナイル」雲のむこう、約束の場所 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
新海誠監督の作家性が滲んだ切ないSFジュブナイル
1996年、日本は津軽海峡を境に南北に分断され、共産国家ユニオンがエゾ(北海道)を統治し、中央に天空を貫く用途不明の塔を建設していた。津軽に住む中学3年生のヒロキとタクヤはこの塔に憧れ、墜落した飛行機を改造して塔まで飛ぶことを夢見ていた。ある日ヒロキが密かに思いを寄せているクラスメイトのサユリに自分達の飛行計画をうっかり話してしまったところ、サユリは強い興味を示し、彼女も塔まで連れていくと約束するが、サユリは突然姿を消してしまう。飛行計画は頓挫し、3年後郷里を離れて東京の高校に通っていたヒロキの元に一通の手紙が届けられる。それは実は3年前に原因不明の病で意識を失ったサユリが書いた手紙だった。
夢の世界に閉じ込められた少女が世界の命運を握っているという設定が『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』を彷彿とさせるSF青春譚。ノスタルジックな風景の中で、自分の気持ちを伝えることが出来なかった少年が決心した冒険とその結末が実に切ない。『君の名は。』に通ずる印象的なカットが至るところにあって、新海誠監督の作家性が今現在に至るまで全くブレていないことに驚愕しかないです。
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