笑の大学のレビュー・感想・評価
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笑いと悲しみ
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戦時中。喜劇の脚本家・稲垣が、検閲官の役所に上映許可をもらいに行く。
役所は上映中止に持って行こうと無理難題を押し付ける。
が、そのたびに稲垣は注文通り直しながらもより面白く仕上げて行く。
役所は堅物でほとんど笑った事のないような人間だったが、
一緒に脚本を作って行くような形になる中で次第にハマって行き、
色々な案を出したり、リハーサル的に実演してみたりするようになる。
しかし劇団のアホ座長や三文役者、モギリやスタッフらは、
お上の言いなりになってなかなか許可を取れない稲垣に対し、
裏切り者のレッテルを貼り、殴ったりしていた。
役所は興味がわいて密かに劇団の上演を見に行き、情報収集した事で、
その事実を知ると共に改めて稲垣の苦労が伝わって来た。
そしてついに自分の負けを認め、上映許可を出す。
しかし稲垣は役所を信用していらん事をベラベラしゃべってもた。
何故喜劇の上映にお上の許可がいるのか、何故無理難題をふっかけるのか、
それらに沿いながらもより高い質のものを作るのが自分の戦いなのだ、と。
堅物な役所のこと、さすがに立場上これは聞き流せなかった。
そして許可を取り消し、最後の難題を出す。
それは一切笑いの要素のない喜劇の脚本を書くということ。
しかし後日修正提出された脚本は、役所が見たこともないほど面白くなっていた。
役所は何度も爆笑しながら何度も読み返し、
その出来の良さに感服する反面、許可は出せないという状態になった。
実は稲垣はその前夜に赤紙を受け取っていた。
そして失意の中、最高に面白い脚本を書いたのだった。
役所は稲垣の才能を認め、稲垣を徴兵しないように国に届けを出していた。
しかし行き違いになったのだった。
役所は立場を忘れ、国のため等に絶対に死ぬな、生きて戻って来いと言う。
そしてその後は俳優を見つけ、見つからなかったら自分自身が俳優になってでも、
この最高の芝居を上映しようと言う。
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昨日ステキな金縛りを見て、三谷作品の中でNo1って感想書いたが、
さっそく記録更新した。いやあ、面白かった。
まず登場人物が少なくシンプルなのが良い。
そして画面とにらめっこしなくてもセリフだけで筋がわかる。
それにしても、面白い喜劇の台本を作って行くシーン自体が喜劇で、
その喜劇の台本を作るわけやから、相当に内容が練られている。
そして最高の喜劇の先に待っていたのは悲劇だった。
そういう運命のいたずらに翻弄される、不幸な時代の真っ直ぐに人達。
役所の立場も稲垣の立場もわかる。その中で最大限の努力をする。
今よりも自由が無い時代の中で。感動的やったなあ。
前半の勢いがなぜ?
前半のテンポが良くて、役所と稲垣君の掛け合いは、初回ほどの爆笑はしなかったが十分面白い。検閲官の役所が急に怒鳴り始める転換が良いね。ほぼ二人だけというシチュエーションも僕的にはかなり新鮮。
中盤、なぜかとてもテンポダウンする。なんかかったるく、ランニングで坂道を転げるように降りきってとてもだるい。
ナゾのまま終盤へ。この召集令状で急転直下。相反する二人なのに、打ち解けて。
若い頃の役所広司は、最近のなんだか重苦しいだけの役作りと違って、柔和な表情に華があったな。
既視感があった舞台は、名古屋市役所でした。見慣れているからか、役所もののロケ地として定着したからか。検索したら、この作品がロケ地初作とあった。
ほぼ二人芝居、ラスト泣ける
ほぼ検閲官と脚本家の二人のやり取りがメイン。
役所さんの検閲官の発言など刺々しさが丸みを帯びたり戻ったり、、複雑な内面のある役が、はまってました。最後、脚本家に赤紙が届いたと伝えるシーンは、号泣もの。
お肉のために。
笑に対する真摯で熱い思い
検閲官向坂(役所広司さん)の怒りが沸点に達する度、何故か笑いが込み上げてきました。
そんな熱い演技の役所広司さんに対峙する実直な喜劇作家椿一を、稲垣吾郎さんが柔らかな表情で好演。
お二人がキラキラした瞳で熱く語り合うシーンに、三谷幸喜さんの笑いに対する真摯な思いを感じました。
-チャーチルの握った寿司が食えますか!!
-何がお國ちゃんだ!!不謹慎だ!!
NHK-BSを録画にて鑑賞
2人のかけ合いが最高の喜劇
「笑の大学」は役所広司(向坂)と稲垣吾郎(椿)の2人によってストーリーが展開されます。
検閲官の向坂が劇団の座付作家である椿の書く台本に1つ1つ難癖を付け、それに対して一晩かけて修正して持って来るという日々。
その段階でより面白いものになっていく台本、2人のかけあいには終始くすっとさせられました。
しかし椿が本音を言ってしまい、向坂を怒らせてしまうシーンがあります。
そこで向坂が出した難題が、一切笑いの箇所が無い喜劇の台本を書け、というもの。
どのように切り抜けてくるのか、どんなトンチで来るのか楽しみにしていたのですが、結局はただひたすらに面白すぎる台本になって返ってきました。
ここはなんとなく期待はずれ。
しかしこれを書いたのが椿に赤紙がきた夜とのこと。
ここでこの昭和15年という戦時下での情勢が盛り込まれます。
あれだけ怒っていた向坂が85回も笑った台本を読み、「死んでいいのはお肉のためだけだ!」と叫んで椿を送り出す姿には、悲しい未来を予感させながらも後味の悪さを残さない感じがしました。
しかしあれだけの面白さを連発していた前半に比べて終盤はどうにも間延びしてしまったような気もします。
決してつまらない訳ではないですが、突然の(もちろん町の様子や設定から予感させてはいましたが)真面目な展開についていけなかったです。
さわやかな反戦喜劇
戦時下における喜劇作家と検閲官のやりとりをコミカルに描いている。
素直な青年を素直に演じる稲垣吾郎とそれに緩急をつける役所広司の
巧みさが絶妙なバランスをかもし出している。戦争と笑いという対照的な
ものから、人のつながりや命の重みを教えてくれる秀作。三谷作品の
中では一番のお気に入りです。
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