「天国ってのは生き残った者が発明したもの」世界の中心で、愛をさけぶ kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
天国ってのは生き残った者が発明したもの
焼きそばパンを食べながら、17年ぶりに見てみました。正直言って、貧乏学生(今も?)だったためウォークマンが高価なため買えなかった世代です。そんな1986年の時代考証、特に小道具・小物のディテールがすごい(朔太郎の部屋の伊藤つかさのポスターなど)。緻密に計算された背景なのだと思います。また、キャスティングの妙が光る作品であり、誰が見ても森山、大沢の二人が同一人物とわかるようになっているのに、律子(柴咲)はいったい誰?と推理させる構成も面白い。
高校時代の朔太郎(森山)の純朴な雰囲気はとても上手く表現されているし、亜紀(長澤)の大胆な剃髪のおかげで涙誘われてしまう。もっともそれにはカセットテープのやりとりや深夜ラジオのエピソードの積み重ねがあってのこと。ダブルカセットとウォークマンが絶妙で、朔と亜紀、それに朔と律子の関係に溶け込んでいる。
映画好きのために好きな映画を伝えるところ。亜紀は『小さな恋のメロディ』と『ローマの休日』と『ベン・ハー』、朔は『ドラゴン怒りの鉄拳』、『ライトスタッフ』、『明日に向かって撃て』。オマージュもいくつか感じられるのです。もっとも序盤に出てきたリュウ(クドカン)が経営する喫茶店「ENTER THE DRAGON」に心を鷲掴みにされたので、とても入りやすかった。
17年ぶりに見ると、意外な俳優が出ていたことがわかりました。堀北真希(写真)、尾野真千子、田中美里、津田寛治、高橋一生・・・渡辺美里や天海祐希、ダンディ坂野まで!墓泥棒なんてしてもいいのか?と疑問点もあったのですが、遺骨と遺灰といった伏線がそれによって生かされ、亜紀の手品にも遺灰を感じてしまった。智恵子抄の?・・・という同じ間違いもありましたが、昨日『おっぱいバレー』を鑑賞したのですぐにわかりました。まさか高校生の朔が童貞だというダブルミーニングではないと思うのですが・・・
やっぱり記憶に残るのはビニールカーテン越しのキスシーン。律子の記憶が徐々によみがえって朔に伝えるところ。オーストラリアのシーン。そろそろ俺も後片付けしようかな。
【2004年5月映画館にて】