「中々面白い」APPLESEED アップルシード R41さんの映画レビュー(感想・評価)
中々面白い
2004年という時代のSFアニメ
冒頭からヨハネの黙示録が引用されている。
つまり終末論的世界
この架空の世界にいるのは、人とクローン技術で誕生させたバイオロイド、そしてサイボーグ
これらがいわゆる人格を持っている。
そして問題となっているのが「人」
人の持つ欲望がこの世界にとってどうにもならない問題で、どうにかして世界を平和にしたいと願う行政院や立法院のジジイ達が、ガイアというスーパーコンピューターのようなものに問いかけ続けて、その方法論を得ようとしている。
さて、
アニメーションは非常によくできていた。
脚本もいい。
そして設定が面白い。
近未来でも人の欲望と争いが尽きないことを言っている。
それをどうにかしたいと考える人と、その中にいながら裏切る人物というのは、いつの時代も変わらないのだろう。
ジジイ達とガイアとで出した答えが、人類を滅亡させることというのも面白い。
そのために使用するウィルス 人間の生殖機能が奪われるという設定
希望を失ったジジイ達にある刹那的な考えというのも想像を掻き立てる。
とくに彼らが博士を殺した背景に彼らの絶望を感じるとともに、ジジイという先のない命の独特な思考設定も面白い。
しかし、
そもそもバイオロイドの思考をプログラミングするという概念があれば、人もプログラミングできそうだなと思った。
そうなれば必然的に犯罪者に対する措置がプログラミングになるだろう。
ただ、
この現在は世界大戦後の混沌とした時期を描いているので、ジジイ達が人に対して絶望しているのは理解できる。
若干不明なのが、このユートピアと呼ばれるオリュンポスという都市のほかにも都市や国家があるが、ガイアという管理AIとオリュンポスのジジイ達が、他の国家を差し置いて人類滅亡を決めたことになる。
これと先の世界戦争の違いはどこにあるのだろう?
バイオロイドに地球を託す選択
人の尽きない欲望
その出した最終的な答えが人類滅亡
わかるようなわからないような… 微妙さが残った。
さて、、
主人公デュナンの母は、アップルシードというバイオロイドの感情抑制を解除し正常な機能を回復させるためのものと、ウィルスを作った博士。
物語上重要な部分だが、設定上も興味深いところだ。
彼女はある意味「神」なのだろうか?
冒頭のヨハネの黙示録 終末の時代における神の計画と救済 未来の運命
人間による選択と決断
これこそが、どうあれ「正しい」ことなのだろう。
また、
バイオロイドはプログラミングによる感情抑制によって、定期的にメンテナンスを必要とする。
バイオロイドの勘定抑制を解除することで彼らはより人間に近い存在となる。
これらの背景を考えると、
かつて奴隷があったように、人はバイオロイドをその代わりにしていることが伺える。
レストランでもバイオロイドに食って掛かる人間が描かれていた。
戦争は殆ど機械とサイボーグだが、パワードスーツの中に入っているのは人間だろうか?
仮にバイオロイドがそれに使われていれば、この物語は大きく矛盾するだろう。
欲に溺れた人間がパワードスーツで戦争
そこにサイボーグ化された人間と機械は登場してもバイオロイドは加担しない。
そこまで徹底管理されているなら、地球救済にはまた別の方法もありそうだなと思ってしまった。
物語はジジイ達とガイアで決めた人類滅亡のウィルス作戦をデュナンらが食い止めることで決着する。
アップルシードがもたらすバイオロイドの解除抑制の解除
これが若者が出した答えで、そこに忍ばせているのが、未来は未来を担うものに任せよということだろう。
さて、、、
サイボーグとなったデュナンの恋人ブリアレオス
戦闘による負傷と生き延びる手段
より戦闘能力が上がった彼だったが、自分自身が機械になってしまったことに対する憂いを感じさせる。
生きる この言葉は彼にとって瞬間的な判断だったが、機械になった苦悩や葛藤は相当なものなのだろう。
もし負傷が戦争によるものでなければ、彼はどうしただろうか?
そこに垣間見れる任務と責任 戦時中の特殊な思考
彼は一生その事に悩み続けるだろう。
バイオロイドに感情の抑揚が解禁されたのは、その後を考えればバイオロイドの生殖機能がないことによる自然絶滅が待っているように思う。
その時人類はどうするのだろうか?
死ぬのは人間と同じで感情が芽生えればより死の恐怖や苦悩を抱え込むだろう。
そしてやがて、その感情が生殖機能獲得へと向かうのではないだろうか?
その是々非々の問題が新しく発生するだろう。
戦闘中の負傷とサイボーグ化という選択肢も、戦争がなくなれば終わるだろう。
それとも彼らの感情コントロールのために戦争は続くのだろうか?
彼らサイボーグはどのように死を考えるのだろうか?
人間 バイオロイド サイボーグ これらにある感情と葛藤を考えてしまう。
主人公らが阻止した人類滅亡だが、企業国家はそのままの形で存続することになる。
問題は地球規模にならざるを得ない。
最終的に、デュナンたちはバイオロイドとの共存を誓い、新しい未来を築くために努力することを決意するが、それに関わった者たちだけがそれらを共有できるが、実際に世界は現状のままだ。
オリュンポスの政治だけがふりだしに戻っただけ。
企業国家は戦争をやめないだろう。
どうするんだ? デュナン
この後の世界についてもう少しだけ描いてほしかった。