「自分からの着信は決して出ないで下さい…」着信アリ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自分からの着信は決して出ないで下さい…
Jホラーってブームになった割りに、興行に結び付かないものが多い。
『リング』でさえ『2』でやっと20億円超え。10億円超えもちらりほらりとあるが、ほとんどの作品が10億円にも届かず。2020年の『事故物件』が久々の20億円超え。
2004年公開の本作は15億円のスマッシュヒット。
好条件や題材が観客の興味を惹き付けたと思う。
売れっ子・三池崇史の初のエンタメ・ホラー。
大ブレイクしたばかりの柴咲コウの初の主演映画。
そして何より、我々の生活に必須の携帯。
突然自分の携帯に、自分の携帯から着信が。
日時は、数日後。聞こえてきたのは…
自分が死ぬ時の瞬間。
死の予告電話。
『リング』の呪いのVHSテープもそうだが、Jホラーってアイデアは秀逸。アイデアは。
女子大生・由美の周りで、死の予告電話で知人や友人が謎の死を遂げた怪事件が続く。
その着信は遂に、由美自身にも…。
死の予告電話で妹を亡くした山下と共に、謎の解明と死の回避を試みようとするが…。
誰もが一度は耳にしたであろうあの着メロ。見事に恐怖を奏でてくれる。
当時、あの着メロを自身の携帯の着メロにした人もいただろうなぁ…。ユニークだけど、それがもし、“モノホン”だったら…?
なんてね。
死の描写はなかなか残酷でグロい。身体切断や身体が異常なまでにねじ曲がったり。
残酷描写やバイオレンスの雄、三池パイセンの十八番。
生放送のTV特番シーンが秀逸。由美の友人・なつみに死の予告電話が掛かり、それを検証しようとするTV特番スタッフに半ば強引に出演させられる。彼女自身もどうする事も出来ず、藁をもすがる気持ちで頼ったのだが…。
視聴率の為だけのスタッフ、他人事のような司会、バカみたいな言い合いをする専門家、お祓いしてくれる霊能者の胡散臭さ…。
“その時”が迫り、なつみは気付く。私、独りだ…。
他人の死や呪いなんて、結局周りは気にも留めず、飯の種。
死の寸前にそれに気付くなんて、哀しい。
周りの阿鼻叫喚の中、なつみは…。本当に自分の事を心配してくれた友人の前で…。
由美と山下が謎を追っていくと、ある母子家庭が浮かび上がる。
その母子家庭で起きた悲劇…。
母親による幼い娘二人への虐待。長女は死亡、次女は施設へ、本人も行方不明となり…。
事件や呪いの元凶は母親…と思われたが、実は長女。美々子。
意外性や悲劇性は充分。しかし、『リング』の貞子、『呪怨』の伽椰子と俊雄に続くホラーアイコンになれなかったのは残念。
映画出演は多いが、そのほとんどがW主演や助演。単独主演は意外や少ない。その数少ない単独主演作であり、しかも“初”ともなれば、作品の出来不出来は別にしても、柴咲コウの魅力を見るだけでも一見。
ホラーに美女は付き物。絶叫や恐怖演技もさることながら、演じたヒロイン・由美は幼い頃に母親から虐待を。物語的にもヒロインの背景付けにも大きな一因となっている。今尚フラッシュバックで蘇る虐待のトラウマの苦悩の熱演は、実力派として注目された本領。
にしても、もう20年近い前の作品なのに、見映えが変わらない柴咲コウの若々しさは驚異的である。
柴咲コウの他に吹石一恵など、美女キャスティングがいい。そういや二人共、“福山繋がり”だね。
クライマックスの廃院での件はJホラーらしくちとグダグダ失速だし、ラストシーンの意図もよく分からない。美々子が由美を憑依したのは分かるけど、何故か明るい終わり方。
これも決して傑作の類いではないが、題材や柴咲コウの魅力やまずまずのエンタメ性で、Jホラーの中でも好きな一本。