「もしも魔法が使えたら」映画ドラえもん のび太の魔界大冒険 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
もしも魔法が使えたら
のび太じゃなくてもみんなが考えるこの想像。もしもボックスを使って魔法の世界にすることをのび太は考え付く。ところがやって来た魔法の世界は勉強せずに簡単に魔法が使える世界ではなく、学問として発達した魔法の世界だった。現実では科学が進歩し、魔法など無いと否定されているが、この世界では魔法が進歩し、科学など無いと否定された世界なのだ。当然落ちこぼれののび太は、小学1年生でも出来る魔法が出来ずに落ち込んで帰って来る。しかも魔法道具も高額であり、空飛ぶ絨毯には免許が必要な上に高いということで野比家には無かった。
頻発する地震や異常気象は魔界接近説であるという満月博士の話を聞いて恐ろしくなったのび太は元の世界に帰ろうとするが、なんともしもボックスをママが捨ててしまい、しかも既にスクラップになってしまったということだった。何故出したままにするんだとか、どうやってあんなデカいものをのび太の部屋から外まで持ち出したんだとかツッコミどころは多いが、そういうストーリーなのだから仕方ない。
夜になり、のび太達の元へ猫が現れる。月光に照らされると猫は姿を変えて大人の女性へと変わる。それは満月博士の娘、美夜子だった。驚く二人に美夜子は悪魔に襲われたことでこのようになっていると説明してくれる。魔界に乗り込んで魔王を倒さないと世界は滅亡するということで、しずかちゃん、スネ夫、ジャイアンを加えて魔界へと乗り込むこととなるのだが、魔界へ侵入する際に美夜子の絨毯は焼けてしまう上に即座に零下の世界が広がっており凍死寸前となる。
ひみつ道具を使うことで凍死を免れ、今度は海を渡ることになる。ここで自然とタケコプターを使うのだが、魔法世界の住人であるしずかちゃん達がタケコプターを使うのは違和感しか無い。何しろ彼女たちは箒で飛べるのだから。まぁ箒が無いからと言われればそこまでだが。なんとか海を越え、原っぱを越え、森を越えとし、大魔王デマオンの元へと辿り着く。しかし魔界歴程に書いてあった心臓に銀のダーツを撃ち込むという弱点が通じずに一行は逃亡することとなる。石ころぼうしを被って簡単に逃げられるかと思いきや、匂いは消えないという弱点を突かれたことでのび太とドラえもん以外が捕まってしまう。ただ、石ころぼうしは透明になる道具ではなく、石ころのように気に留めなくなるという道具なのでちょっと矛盾している。
タイムマシンでもしもボックスを使う前の自分たちを止めようと思い立ったドラえもんはとりよせバッグでのび太の机を取り出し、タイムマシンに乗ってもしもボックスを使う前の時間へと戻ろうとする。しかしなんとメジューサが机の中へと入り込み、タイムマシンも無いのになんと時間遡行を行うという離れ業を敢行する。そんなのありなのだろうか。なんとかもしもボックスを使う前の時間へと来たドラえもん達だが、メジューサによって石化させられてしまう。冒頭でのび太達が不気味な石像だなと思っていたのは、未来の自分達だったのだ。
月が出ている時だけ戻れるということで必死にもしもボックスを使うことを止めようとするが、雨まで降り出したことで失敗に終わる。もうダメだと思ったところでなんとドラミちゃんがタイムふろしきで助けてくれる。虫の知らせアラームを聞いてドラえもんのピンチを察したというのだ。さすがドラミちゃん、優秀過ぎる。ドラミちゃんのもしもボックスを使って魔法の世界を無くして元通りと思ったところで、なんと魔法世界はパラレルワールドとして存続すると聞かされたことで元の世界に戻ることをのび太は決意する。
囚われていたしずかちゃん、スネ夫、ジャイアン、美夜子、満月博士を救出し、何故デマオンが倒せなかったのかとなったが、魔界歴程の未翻訳部分をほんやくコンニャクで見ればいいと指摘するドラミちゃん。さすドラミ。実はデマオンの心臓は魔界星から離れた場所にあるデモン座のアルファ星と呼ばれる星に偽装していたことが発覚する。魔界歴程を書いた奴、凄過ぎんか?
急いで魔界星を脱出し、アルファ星へ向かう一行。デマオンも弱点を知られたことに気づいて必死に追撃するが、間一髪のところでジャイアンの投げた銀のダーツがドラミちゃんのビッグライトによって巨大化し、心臓へ突き刺さる。魔界は滅び、魔法世界に平和が戻った。なかなかに冒頭から怖いシーンが多い。不気味な石像、早くも地球を闊歩する悪魔たち、猫にされてしまった美夜子、魔界突入後も恐ろしい世界観が続き、何よりも最大の敵であるメジューサは時間遡行さえ行って追いついて来る。結局再戦することは無かったが、ドラえもんに置いてナンバーワンに恐ろしい相手だったと言える。