「家出先は過去の世界」映画ドラえもん のび太の日本誕生 森林熊さんの映画レビュー(感想・評価)
家出先は過去の世界
原始人の少年ククルはいつものように魚採りをして村に帰ったところ、村は滅びていた。それどころか突如現れた時空乱流に吸い込まれて、現代日本に漂着する。その頃、のび太どころかしずかちゃん、スネ夫、ジャイアンに加えドラえもんまでもが家出を考える状況に陥っていた。どこの土地も所有者があるということで、タイムマシンに乗って誰も所有者のいない7万年前の日本へ向かい、秘密基地を建設する。恐竜がいる時代には多々行けど、今作の舞台は恐竜が滅びた後の新生代の時代になる。
ジャイアンが建築、しずかちゃんが植物、スネ夫が食料を担当することになり、のび太はペット大臣となる。普通に育てるだけではつまらないと考えたのび太は遺伝子組み換えによってペガサス、グリフォン、ドラゴンを作ることに成功する。やりたい放題である。翌日現代に戻ったスネ夫とジャイアンの前にクルルが現れる。のび太が知らない奴を引き込んだと怒るジャイアン達だったが、ククルが本物の原始人だと気づくドラえもん。ククルはヒカリ族と名乗る一族の一員だったが、クラヤミ族という一族から執拗に追われていたことが判明する。そして恐らく捕まったヒカリ族は北に連行されてしまったということで、ククルの村にペガサス、グリフォン、ドラゴンを置いてドラえもん達はヒカリ族を追い掛けることに。クラヤミ族は不死身の精霊王ギガゾンビが後ろ盾になっているということだったので、ドラえもんも精霊大王ドラゾンビとして降臨することに。
あっさりクラヤミ族を蹴散らすことに成功したものの、なんとクラヤミ族を指揮していたのは土偶のような姿をしたツチダマだった。しかも衝撃波を繰り出してくるのだが、衝撃波すら弾くヒラリマントによって粉々に破壊することに成功する。ヒカリ族を秘密基地へと案内し、一度は現代に帰る一行。ところがドラえもんが持ち帰ったツチダマの破片が勝手に修復する性質を持っていたことから、ツチダマは未来の素材である形状記憶セラミックで出来ている事に気付く。
ヒカリ族が心配になった一行はタイムマシンに乗ってヒカリ族が再興した場所へと戻るが、なんとギガゾンビによってヒカリ族全員がギガゾンビの拠点であるトコヤミの宮へと連行された後だった。それを追ってトコヤミの宮へ向かう一行。気温は氷点下50度という極寒の地であり、エアコンスーツですら寒いと感じる環境。リニアモーターカーごっこで雪山を爆走することになるのだが、さすがに体感温度は変わらないのだろう。そうじゃないとマジで凍死してしまう。
偶然辿り着いた洞穴がトコヤミの宮へと通じているというウルトラCで、乗り込むことになるのだが、なんとリニアモーターカーごっこで脱落したのび太は雪山で遭難してしまっていた。ドラえもんはレスキューボトルを使ってなんとかのび太が助かることを願い、先に乗り込むことにする4人。だがなんとレスキューボトルはツチダマに発見されて破壊されてしまう。遭難して走馬灯すら見え始めるのび太。だがそこにマンモスが現れ、ラーメンの汁のようなものと小箱を差し出す。後で判明するのだが、これは実はタイムパトロールによる擬態だったのだ。いや、何故突入しないとかツッコんではいけない。
ウルトラタイムウォッチを使って時を止め、脱出経路を確保しようとするドラえもん。通りぬけフープを使うがなかなか通り抜けられずに慌てるが、なんとその先にあったのは亜空間破壊装置だった。そして止まった時の中にも関わらず何者かの足音がする。扉の先から現れたのはギガゾンビだった。まさに「我が止まった時の世界に入門してくるとは」という感じである。ギガゾンビは時間犯罪者であり、恒久的な歴史支配を達成するために亜空間破壊装置を使うことでこの時代にタイムマシンで来られないようにしようとしていたのだ。なんて恐ろしい道具があるのだとビビる。
時が動き出したことで、あっさり捕まってしまう4人。復活したのび太の元にはぐれてしまっていたペガサス、グリフォン、ドラゴンが現れる。そして4人の窮地へ駆け付けるのだが、のび太とギガゾンビが接敵するのはこのシーンくらいで、直接的な対峙は全くない。全体を通してギガゾンビとの対峙シーンが余りに短い。しかも対峙したと言えるのはドラえもん一人で、対決と言えるシーンは皆無。何しろ一方的にドラえもんが制圧されて終わりなのだ。
ツチダマとの再戦も瞬間接着銃という最適解を繰り出したことで衝撃波を出させる隙すら無く無力化してしまう。なんかもっと苦戦しそうな感じじゃ無かった?ギガゾンビの罠によって閉じ込められたのび太達だったが、マンモスから預かっていた小箱のボタンを押すことでタイムパトロールが急行。基地は制圧され、ギガゾンビは逮捕される。いや、マジでなんでタイムパトロールは張ってたのに突入しなかったのか、本当に分からない。そしてこれでおしまいというのが非常に呆気ない。もうちょっと戦う枠を取っても良かったと思う。全体的に終盤の駆け足感が凄い。
ペガサス、グリフォン、ドラゴンはタイムパトロールによって22世紀にある空想サファリパークへ連れて行かれることが決まる。非常にモヤモヤしたピー助に比べるとこの方がまだマシに感じる。子供の頃は野生に戻さないなんて可哀想と思ったかも知れないが。
ちなみに翌年ギガゾンビの逆襲というファミコン版のゲームが出ている。魔界大冒険、海底鬼岩城、竜の騎士、日本誕生の後が舞台というゲームになっているので、YouTubeなどでプレイ動画を見るのもありだ。ちなみにそちらではギガゾンビは最終的に改心している。まぁでも極悪犯罪者なので牢屋にぶち込んでおくのが正解だと思うが。