「当たり前のラブソング」超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
当たり前のラブソング
「結局なんだったのかしら、あの歌?」
「ただの流行歌よ」
「流行歌?」
「何万年も昔に異星人達の街で流行った...(当たり前のラブソング)」
TVアニメ「超時空要塞マクロス」(1982〜1983)の劇場版。2009年の世界を舞台に、異星人の襲撃を受けて壊滅した地球と、そこから生き延びて宇宙戦艦マクロスで星間を漂う人々、そして統合宇宙軍パイロット・一条輝(声:長谷有洋)、マクロス航空管制主任オペレーター・早瀬美沙(声:土井美加)、銀河系アイドル・リン・ミンメイ(声:飯島真理)の揺れ動く三角関係を描く。上映後はマクシミリアン・ジーナスを演じた速水奨と「マクロスδ」でレイナ・プラウラーを演じた東山奈央の舞台挨拶生中継付き。
もう胸がいっぱいになってしまった。リン・ミンメイの名を永遠のものにした伝説の作品を劇場で、しかも4K ULTRA HDで観られる日が来ようとは。この感動は言葉にならない。もちろん以前にも観ているが感動の度合いが違った。ただでさえ傑作だった作品がさらに輝きを放っていた。
1980年代半ば〜1990年代は、日本アニメにとって最も技術の粋が凝縮された時期だったのかもしれない。アニメのCG化によって、アニメーターの負担は減ったかもしれないが、本作のような「セル画を使った鬼のような描き込み」は永遠に失われたプロトカルチャーとなってしまった。後に「ミンメイ・アタック」としてサブカルチャーの歴史上に名を残すことになる本作のクライマックスは、手描きと思うだけで鳥肌が立つ。この作画に参加したのは庵野秀明、合田浩章といった、その後のアニメ文化の牽引者たちだ。特に庵野秀明に関しては、その後の作風を見るにここが原点だったのではないか。そう思うだけでも本作が後世に与えた影響は計り知れない。
タイトルにもなっている「愛・おぼえていますか」は「マクロス」シリーズの中でも聖域といっていい楽曲だが、個人的にはエンドロールで使用される「天使の絵の具」が全シリーズを通して最も好きな楽曲だ。しかし公開当時は作画が追いつかず、本来はミンメイのコンサートと共にエンドロールが流される予定だったのがブラックアウトのままだった。今回の上映ではその後に追加されたミンメイのコンサートの前半部分が映像に使われており、まさか観られると思っていなかったので思わず涙してしまった。
さて、世相もあってか、現代からみると劇中ではやや女性蔑視のような表現・価値観がチラチラと見受けられる。その一方でキャラクターは多様な人種で構成されており、現代でさえうまく捌けていない「ポリティカル・コレクトネス」が実現できている点は新鮮だった。このコメントを書いている今現在、ミンメイが身を置いている芸能界は性の問題で激震が走っている。狙ったわけではないとはいえ、そのような時期に本作を観た意味合いとは一体何だったのか?再び文化を取り戻せるかの正念場に立たされているのは我々マイクロンかもしれない。
A 1,2,3,4,1,2,3,4...
本作の魅力を言い尽くして余すところがないレビュー。感服しました。
>芸能界は性の問題で激震が走っている。狙ったわけではないとはいえ、そのような時期に本作を観た意味合いとは一体何だったのか?
まさにそうですよね。文化の危機に直面しているのかもしれません。
「プロトカルチャー」「マイクロン」を使いこなされていて(笑
「デカルチャ~」もぜひ!