劇場公開日 2003年11月8日

「登場人物の個性と流れるような演出の上手さ」東京ゴッドファーザーズ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0登場人物の個性と流れるような演出の上手さ

2022年7月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

総合75点 ( ストーリー:70点|キャスト:80点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:70点 )

 物語はわずか数日の中にとんでもない偶然の一致をこれでもかと散りばめたもの。そのあり得ない話の中を、強烈な癖のある登場人物が喋りまくって動き回って動かしていく。

 あまりにも偶然が多い物語は普通ならばこんな馬鹿なと思ってしらけるだけなのだろうが、ここまで徹底されると喜劇だし受け入れられなくもない。物語の流れを追いかけることよりは、登場人物の抱える背景にある問題と、それらがこの数日の偶然により大きく変わっていくことのほうが重要。それでも結婚式場で銃撃事件をおこした南米人の行方はどうなったのかは気になった。
 その登場人物だが、たとえ心が善良であったとしても所謂普通のまともな善人が主要人物として登場しない。こういう作品に付き物の美男美女もさっぱり登場しない。もっともミユキは今敏監督の中では可愛いという設定らしいのだが、私には特に可愛いとは思えなかった。でも可愛い声の声優ではなくむしろ低い声で、路上生活の中で可愛らしく喋ろうともしないところがこの作品には合っているのかもしれない。ハナを演じたのは梅垣義明で、作品中の声優としては一番印象に残った。

 今敏監督の特徴である流れるように進む物語の演出は相変わらず上手い。それを支える背景音楽も、特に綺麗な聞かせる音楽ではないのだけど、物語を動かす要素として良く出来ている。つくづく今敏監督の早世が惜しまれる。

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Cape God