「今敏が遺した”日本のホーム・アローン”」東京ゴッドファーザーズ Elvis_Invulさんの映画レビュー(感想・評価)
今敏が遺した”日本のホーム・アローン”
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東京は聖夜、配食を持ち帰り身を寄せ合って生きる3人のホームレス、ギン・ハナ・ミユキ。
捨て子を拾った彼らが親を探して彷徨う道のりに、艱難と奇跡が降りかかる。
「パプリカ」「千年女優」を手掛けるも夭折した天才、今敏が贈る年越しムービー。
本作を今敏作品の中では特色が弱く魅力に乏しいとする意見もあるが、筆者はこれには賛成しない。
物語にある種ご都合主義にも思える展開が見られることは否定しないが、
寒々しく痛々しいホームレスたちの生き様と、「神の子」__イエスの如く登場し、白毫を彷彿とさせる黒子を宿したこの子が作品内で事実として「神の子」なのは明らかだ__がもたらす現実を逸脱した祝福とを同じ世界の中で描き切る本作は現実と虚構の共存する世界を作りだす今敏の魅力に十分に満ちている。
むしろ彼の力量あってこそ、この作品が浮世離れした展開を持ちながらもコメディとして破綻していないと言えるのではないだろうか。
ジョン・フォード作『三人の名付け親』、そしてその原点たる東方三博士の礼拝をイメージソースとする本作は、最後にはミユキの”帰宅”を示唆して幕を閉じる。
(一部今日の視点では大層揉めそうなセリフもありはするが)筆者としては、”家族”を突発的に喪失した子を巡る年末ハートウォーミングコメディとして『ホーム・アローン』と比肩できる存在と信ずる。
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