劇場公開日 1993年12月25日

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「映画『海がきこえる』レビュー|経営者の視点から見る“心の距離”と“選ばれる理由”」海がきこえる 林文臣さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 映画『海がきこえる』レビュー|経営者の視点から見る“心の距離”と“選ばれる理由”

2025年7月14日
iPhoneアプリから投稿

『海がきこえる』は、1993年にスタジオジブリが手がけた青春アニメでありながら、派手な演出もない、静かで繊細な作品である。だがこの「静かさ」の中にこそ、経営者として学ぶべき“本質”があると感じた。

高知の高校を舞台にしたこの作品は、主人公・杜崎拓と転校生・武藤里伽子のすれ違いや葛藤を描く。恋愛のようでいて、はっきりとは言葉にしない感情の交差が、観る者の記憶に静かに染み込む。
この物語で強く印象に残るのは「言葉ではなく、行動と思いやりで人の心は動く」という点だ。これはまさに、経営においても同じである。お客様に“選ばれる理由”は、単なる言葉や商品スペックではなく、目に見えない「心地よさ」や「信頼」だ。

たとえば、私が関心を持っているよもぎ蒸しのサロン経営でも同様である。どれだけ効果効能を説明しても、実際に来店された方が「ここは安心できる」「また来たい」と思わなければリピートにはつながらない。それは、店の雰囲気・接客・空気感といった、五感に触れる“無言のメッセージ”で伝わるものだ。

『海がきこえる』の魅力は、登場人物たちが何を言うかではなく、「何を言わずにいるか」にある。その沈黙が、関係性をよりリアルに、そして重層的に描き出す。経営者もまた、社員やお客様との間で“察する力”“聴く姿勢”を持つことが大切だと気づかされる。

大声でアピールしなくても、人の心に届くものがある。『海がきこえる』は、よもぎ蒸しのように、静かに心と体に染みわたる作品である。派手さではなく、芯の強さと丁寧さ。経営においても、そうありたいと感じた

林文臣