「青春は、身勝手で我儘で理不尽。」海がきこえる サイレンスさんの映画レビュー(感想・評価)
青春は、身勝手で我儘で理不尽。
去年あたりに一館だけで再上映されていた本作、
今年になってまた映画館で見られるということで鑑賞。
初めて見た人はきっとこう思うだろう。
『ヒロインのどこがいいのかわからない』
『主人公かわいそう』
『自分勝手な人間ばかりだ』
まったくもってそのとおりだと思う。
そしてそこがとてつもなく現実的で
この作品を愛する理由へと繋がるのだと感じた。
私が学生だったころ、
『それ』は果たして大層な人間だっただろうか。
自分自身の学生時代を思い返してみても
ムダな見栄をはり、意味のないウソをつき、
弱いくせに強がって、いつだって自分本意だ。
しかし私が大人になるにつれて思い出は美化され、
あたかも元から常識人であったかのように思い込み、
その時ホントはどう考えて生きていたかなんて忘れてしまう。
高校生なんて無知で未熟で未発達。
そんな姿をスクリーンを通して見せられると
『なんて身勝手なんだ。我儘なんだ。酷い人間だ』
と、どうしても思えてしまう。
それは一人の成熟した大人として
未熟な彼らの姿を見ているからで
ある意味『自分が大人になった証拠』なのかもしれない。
ヒロインに関してもきっとそう。
『なんて自分勝手で厚かましい女なんだ』、
おそらく視聴者がそう思うように作られている。
そしてそれはとても現実味がある。
美人でスポーツも勉強も出来て、
東京にいる時は友達も彼氏もいたのに
親の都合で来たくもない地方に連れてこられた女の子。
そんな子が皆に愛想を振りまいて優しくするだろうか。
クラスに馴染んで皆から好かれるだろうか。
多感な思春期にそれを易々とこなせる子がいたら
かなりの世渡り上手である。
ヒロインの武藤はどこまでも身勝手。
傍若無人で周りの気持ちを考えられないただの子供。
まだまだ子供の延長、もしくは途中でしかないのだ。
そしてそんな武藤は歳を重ね、
きっとあの頃の自分をとても恥じて、とても悔いている。
『武藤は良いヒロインだ』と思う人は
そういう人間味あふれる所に惹かれているのかもしれない。
今作は大人が忘れてしまった『リアルな青春』を
嫌でも思い出させてくれる。
薄れた記憶を無理やり引っ張ってきて
否応なしにたたき起こしてくれる。
主人公があまりに大人すぎて浮いているくらいだ。
青春なんて実際はキレイなものではなく
カッコ悪くてみっともなくて、今思い出すと
顔から火が出るほどどうしようもなく恥ずかしい。
だからこそこの作品は愛されるのだと思う。
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