劇場公開日 2002年9月14日

「円環」千年女優 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5円環

2024年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

以前配信で観ていましたが、リバイバル上映を機に改めて劇場にて。

万華鏡のように場面がくるくる替わり、話を聞いているインタビュアーの2人が目撃しているのが千代子の記憶なのか、出演した映画作品の中なのかわからない虚実が混沌とした世界。
この手法は、「描かれたものが現実感を持ち、魂が吹き込まれる」アニメーションならではの描写(イリュージョン)だなと。
このようなビジュアルはアート性を高く有し、構成もまた観る側が想像力を駆使しなければならず、海外で先行して評価されたのもわかる。
顔のアップに全部セリフで説明する作品に慣れたアニメファンが多い日本で、最初は評価されず、評判になったのは海外の評からの逆輸入的だったのもわかる。

また、老婆の回す糸車のように、因果はくるくる回って円環をなし、追いかける姿が無限に感じるくらい繰り返される。
その円環をうまく繋げるように、効果音も音楽も計算されつくしたように回っていました(故に、映画館のスクリーン&スピーカー環境で観た甲斐はあったと思いました)。

その果てにたどり着く真理が、最後に千代子の口からセリフとなる。
過去に読んだ様々なレビューに「最後のセリフでずっこける」みたいな評が多かったのですが、(知っていたこと以上に)観直してむしろすとんと腑に落ちました。
純愛に見せておきながら、実はかなり早い段階で本人がそれに気づいていた節がある描写だったように思えたからです。

常に、何かを(誰かを)追いかけている自分自身を好きであり続ける、永遠の子どもな部分(少女性)。
それはまた、千代子を追い続けていた立花の青年の日の恋心とも重なって、円環を成す。

過去の様々な邦画へのリスペクト満載なオマージュも、映画というものの円環でもあったような。

上手い演出・構成だなと、改めてしみじみ。
今更に、今 敏監督が若くして亡くなったことが惜しまれました。

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コージィ日本犬