「今でも忘れられない作品」冷静と情熱のあいだ suntammyさんの映画レビュー(感想・評価)
今でも忘れられない作品
もともと映画の原作である辻仁成さんと江國香織さんがそれぞれにBluで順正、Rossoであおいの物語を書かれた小説の大ファンでした。
小説を映像にすると、どこか奥行きや物語の深さにかけたりしがちなのは否めない作品も多い中、この映画版は本当に小説の世界観がそのまま投影されていて大好きでした。
竹野内豊さん演じる順正とケリー・チャン演じるあおいはまさに主人公のイメージ通り。順正はみんなに愛されるかわいさのある好青年キャラクターそのものでしたし、ケリー・チャンの何を想っているか読み取りづらいクールビュ−ティで口数少ない感じも良かったです。メミは小説からはなんとなく今で言えば長谷川潤さんのような外見をイメージしていましたが、篠原涼子さんのわがままで順正の過去に嫉妬する女性役も良かったです。
なにより、東京は梅が丘のアトリエ兼アパート、フィレンツェの景色が本当に素敵でした。エンヤのWild Childも大好きでした。
なぜ、いま、ふとこの映画のこと思い出したんだろう。また観たくなりました。DVDも小説も何度も繰り返し観ているのに。
そして、またフィレンツェに行きたくなりました。大好きな街。Florenceという英語の呼び方よりFirenzeというイタリア語の呼び名がふさわしい街。街には訪れたのに、まだ昇ったことのないあのDuomoのてっぺんからの景色をこの目で見てみたい。
あの時の私には、主人公あおいの冷静さがもどかしかったし、自分ならああいう風に振る舞えないと感じていました。
でも、15年経った今は、その静かな強さ、普段は抑えているけれど、内面に抱える静かな湖のような透明で深い愛情が理解できるように。今の私がこの映画を観たらどんな風に感情が動くか、気になります。