「リアリティショーと何が違うのだろう?」DISTANCE ディスタンス あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティショーと何が違うのだろう?
デイスタンス
2001年公開
コロナ禍の頃、ソーシャルデイスタンスという言葉を幾度となく聞きました
感染防止の為に人と人との間隔をとろうという意味でした
人は親密度で間隔が広がったり狭まったりします
それは内面的なものであっても外面的に表れでるものです
固定的なものでなく、その時の面持ちによって常に可変しているものでしょう
終盤近く、新宿駅の光景は雑踏であり、そんな事人間関係の距離感は外からは伺えはしません
しかし、山中においてはどうか、
その個人の心理状態を他者との距離で無意識に表出しているのではないでしょうか?
作劇はあるはずです
シナリオは間違いなくあると思います
しかし、俳優達には自分の台詞だけしか教えられていなかったといいます
相手の反応に反射していくほか無いのです
物語の全貌を知り得えない以上、自分の台詞と相手の反応だけを手掛かりに即興的に演じて行くほかありません
そのリアリティを本作の核として監督は求めたということだと思います
そこに登場人物の間の距離感(デイスタンス)が脚本に描ききれないものが表現されるはずだ
それで本物に限り無く近い演技になるはずだ
俳優の役作り以上のものが手に入るだろう
だからこそ、劇伴たる音楽は一切ありません
劇伴音楽は、そのシーンの説明であり、俳優の演じている内容の説明でありかつ、その増幅の為にあるものですから、音楽を入れることは本末転倒になるから故に排除されたのでしょう
そのような仮説で撮られた映画のように自分には思えました
でもそれはリアリティショーと何が異なるのだろうかと思うのです
それで、得られた結果は?
まるで架空のドキュメンタリーのような映画が迫真性をもって完成したということなのだと思います
映画の作り手側からするとそれもありなのでしょう
でも観客の立場で言えば、それに2時間つきあわされのはどうなのか?と正直疑問に思うのです