「学生映画でこの完成度はすごい」青 chong 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
学生映画でこの完成度はすごい
『怒り』や『フラガール』の李相日監督の学生時代の作品であり、商業映画デビュー作でもある。学生映画が劇場公開まで行くだけでもすごいが、ナラティブな完成度の高さに驚く。監督自身のルーツでもある朝鮮高校の青春を描いた作品なのだが、マイノリティの悲哀にとどまらず、自分は何者であるのかという普遍的な自己形成の葛藤を描いている。「関係ねえよ、俺は俺だ」という最後の台詞は、シンプルだがここに至るまでの葛藤を丁寧に描いている。結局最後は自分が生きたいように生きるしかない、しかし、その結論を安易に出さずに悩み抜くプロセスこと大切だと本作は描いている。
作風は、本人も認めているが、北野武監督の作品の影響が色濃い。編集による時間の飛ばし方や省略話法、ブルートーンの映像、独特の切り返しのタイミングなど、『キッズ・リターン』を思わせる画がいくつか出てくる。
しかし、監督自身の脚本を織りなす物語は間違いなくオリジナリティにあふれている。主演が有名になる前の眞島秀和なのも感慨深い。
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