「おじいちゃんに優しい世界」老人Z つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
おじいちゃんに優しい世界
ハリウッドなどでのAIの関係の作品だと、その多くが人に害をなす「敵」として登場する。もしくは、人間になりたがるAIだ。
AIがAIとしてそのまま存在し人間と友好的な関係を築く物語を紡げない。
その点において日本の場合だけ少し違う。キリスト教的考え方と付喪神的考え方の違いだろう。
そこから始まり、鉄腕アトムやドラえもんを経て、AIは基本的に人間の友であり、AIはAIとしての自覚を持ち存在するのが日本だ。
この作品はAIが暴走する物語だ。
しかしハリウッドのように人間を滅しようとするわけではない。
そして何より、本作に登場するキャラクターの多くが、AIに芽生えた自我に対して「個人」として接しようとしているところが興味深い。(個人として扱うに足る仕掛けはされているのだが)
この、実は割と不自然と言える事態に対して、観ている多くの日本人は違和感を感じないだろう。
高齢化社会、老人介護と、現代がまさに直面している問題を隠れ蓑にしているせいもあるだろうが、自然と受け入れられる土壌が観る側にあることは驚くべきことだと思う。
SF作品が好きで、洋画を多く観る身からすると、AIの扱いに関してだけは日本のアニメーションが最も進んでいると感じずにはいられない。
それはもしかしたら自分が付喪神的考え方からきている人間だからかもしれないが。
「AKIRA」と「攻殻機動隊」を混ぜてスパイスに少し「パプリカ」。それを「うる星やつら」のノリで、といった作品で、中々面白く観ることができた。
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