リラの花忘れじ

劇場公開日:

解説

菊田一夫の原作を小田英雄(東宝「或る夜の殿様」「四つの恋の物語(1947)」第二話「別れも愉し」の脚色者)が脚色し、「金ちやんのマラソン選手」「仮面の街」の原研吉が監督する。撮影は新人森田俊保の担当、高峰三枝子、佐分利信、村田知英子、井川邦子ほか、井上正夫、藤田進が出演する。

1947年製作/94分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1947年10月28日

ストーリー

明治三十年。にら崎伝右衛門は園井の出資を得てにら崎北海道開拓会社を設立し、鉄道施設を計画していた。しかしたまたま行きあたるアイヌの土地を買上げるのは生やさしい事ではなかった。アイヌに取って見ればなるほど故郷を失うのは心痛い事であったろうし、それに東京日報の新聞ではにら崎の事業家根性を非難し「アイヌの人々を人道の名において守れ」等と書きたてられにら崎の事業は一層難航にあえいだ。それだけではなかった。東京日報の記者松坂俊政は北海道まで渡って来て北海日報にまでにら崎を攻撃し始めた。またにら崎開拓会社のやり方にも相当落度があり松坂の攻撃も無根のものではない。アイヌの土地を安く買上げようとしたり、開拓移民の人々を虐待したりした。しかしそれはにら崎の名において園井が私腹を肥やすためにした仕業だった。新聞記者松坂俊政、実をいえば彼はにら崎の息子だった。にら崎は昔から家庭も省みない程事業熱に燃え、そのために俊政の母菊は子供を二人抱えて苦しい生活を続けた。しかしついに堪えられず末娘典子をにら崎の下へ残して俊政と共に出てしまった。菊は俊政を父に勝る実業家に育て上げて、見返してやろうという一念で女中にまでなったが、俊政の学校が上になるにつれて学資がかさみ、それに随って菊の働き場所も段々東京から遠去かって行き、彼が大学を出る頃は家を渡って北海道まで流れて来ていた。だが俊政は母の念願にしたがい新聞記者になった。苦難の路を抱き続けて来た宿夢を無惨に打ち砕かれた菊は、その時凡てを捨てて修道院の門をくぐった。そういう母親に育てられた俊政は父を恨んでいたが、時折俊政を訪れる妹典子もまた同じように母を嫌っていた。しかし俊政に母の気持を聞かされて始めてまぶたの母が恋しくなって来た。だが今は凡てを棄てて神に仕える母。修道院の塀の外で母の名を呼び続ける典子。その声は聖ルールデスの前にぬかづく菊に聞えないはずはない「おかアさまア、私典子でェす、おかアさまア」泣声に崩れようとする典子の声に神人の胸は乱れる。一方にら崎は俊政の演説に動かされ、早速悪辣な園井と手を切り、持物全部を投げ打って自分自身の資本で開拓事業を続行する覚悟をした。こうなって見るとにら崎は盲目であったし、俊政はやり過ぎであった事が二人の胸を曇らしたがさすがに父と子の間柄二人はただ黙って手を握り合った。

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