陸軍中野学校 密命のレビュー・感想・評価
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実際に在ったゾルゲ事件の概要を知っていると、本作が二倍にも三倍にも面白く感じられるだろう
いや~!これは面白い!シリーズ絶好調です 陸軍中野学校シリーズ第4作 前作は1940年の年末頃で、本作は1941年初夏上海から始まる ということは椎名は前作から引き続き、上海の辻井機関で情報活動をしていたらしい しかし急転直下東京に舞台が変わる 今回は本作の舞台と同時期に実際にあった一大スパイ事件のゾルゲ事件を英国版にしたようなお話 容疑者達のプロフィールもゾルゲ事件の関係者を連想させる 前作の日中秘密和平工作を推進していたのは、実は本作の高倉元外相であったような設定なので、連続していなくはない 日中和平が成れば、対米戦争の危険は回避される つまり日本は北進戦略を採るということになる これを妨害するのはどこの国なのか? そうなれば一番困るのは、やはりソ連になるわけだが、果たして単純にそうか? 妨害したのはソ連かもしれないが、英国への情報漏洩はどうなのか? これが本作のテーマに当たる つまりスパイ事件とは単純なものではなく、複雑な背景と計算があるのだ 高倉元外相は、この日中和平工作を成功させ、またその工作の存在やそのほかの国策までを、わざと英国に漏洩させることで、日本に対英米戦争の意志なしを伝え、戦争回避を模索しようとしていたのかもしれない そう考えると彼の行動や言動、その最後も納得がいく もしかするとあの日記の記載のシーンは、高倉元外相がキャッツアイの正体に気づいて、故意に情報漏洩を行っていくことになる経緯を説明していたものかも知れない 表面的には単なるスパイ合戦の映画のように見えるが、実際に在ったゾルゲ事件、さらにはコックス事件の概要を知っているとこのようなことが様々に空想されて、映画が二倍にも三倍にも面白く感じられるのだ 今回もボンドガールならぬ椎名ガールが登場 前作では椎名ガールに胸を強調するセーター を着させて少し目を楽しませてくれる程度であったが、今回は椎名ガールは二人となり、清純タイプとお色気タイプで分担をしている 野際陽子はお色気担当で流石の存在感を示してくれる 本作は1967年の公開 007シリーズなら007は二度死ぬが公開された年 ヒッチコックは前年に引き裂かれたカーテンというスパイものを公開している 米ソ冷戦の真っ只中だったのだ 日本も本作の15年後の1982年にソ連のスパイに70年代に工作を受けていたことが明るみでたレフチェンコ事件があった 戦前だけの話ではない 時は流れて米中の新冷戦が始まった コロナウイルスのパンデミックにより、それは一層加速されて行くだろう 日本はまさにスパイ合戦の真っ只中のはずだ 本作のようなことが今日も水面下で行われているのではないだろうか? いや、本当に戦後の日本に情報機関が存在しないならば、なんと脳天気なことだろう 逆に背筋が寒くなる話だ
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