「スパイとは真心の職と見つけたり?」陸軍中野学校 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
スパイとは真心の職と見つけたり?
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「陸軍中野学校」シリーズ第1作。
Amazonプライム・ビデオで鑑賞。
実在した帝国陸軍のスパイ養成機関“陸軍中野学校”を舞台に、スパイになった青年・三好(椎名)次郎と、彼への愛情故にスパイとなってしまった恋人・布引雪子の悲劇を通して、諜報戦、もとい戦争の残酷さを描いた作品。
市川雷蔵の放つニヒルな魅力…! 中野学校の教育―別人に成り切る方法、様々な諜報技術、さらには女を“悦ばせる”術まで教え込まれ、骨の髄からスパイとなっていく様を、虚無感とそれに伴う色気が漂う佇まいで淡々と演じていました。
淡々としていたからこそ、普通の人間から“スパイ”という人種に変貌していく恐ろしさが、浮き彫りになっていくように感じました。任務のためとは云え、恋人である雪子を殺害すると云う“通過儀礼”を終えた彼の心境や如何ばかりか?
草薙中佐が語ったスパイ論―スパイとは真心が肝心である。本当にそうだろうか、と思いました。嘘偽りの無い諜報活動なんてありえない。相手をどれだけ出し抜いて、こちらに有利な状況へと持っていくことが出来るか…。それが全てでは?
言葉巧みに青年たちをスパイの道に引き摺り込んだ所業は、まさに“戦争”そのもので、残酷極まり無い…。そこには真心なんて無い…。青年たちを掌握し、一流のスパイに育て上げた草薙中佐―。本作でいちばん恐ろしいのは、この人だよ…。
やがて三好は、一連の事件を通して気づいていく…。スパイの世界に、真心なんてものは存在しない。そんなのは詭弁であり、あるのは勝つか負けるか、騙すか騙されるか、殺るか殺られるか、と云う単純明快かつ残酷なものである、と…。
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