劇場公開日 1997年10月4日

「令和の今でも一切色褪せてない超極上エンターテイメントコメディ」Lie lie Lie 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0令和の今でも一切色褪せてない超極上エンターテイメントコメディ

2024年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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『Lie lie Lie』(1997)

神保町シアターさんにて未DVD化・未配信を集めた「一度はスクリーンで観ておきたいーー忘れられない90年代映画たち」(2024年6月29日~8月2日)特集上映にて鑑賞。

私のなかでも十指に入る大好きな作品。スクリーンでの鑑賞は27年ぶり。
原作は中島らもさんの小説『永遠も半ばを過ぎて』(このタイトルがまた良いですよね)、監督は『櫻の園』『12人の優しい日本人』の中原俊監督。
不眠症の電算写植オペレーターを佐藤浩市さん、浩市さんのところに転がりこむ高校時代の同級生詐欺師を豊川悦司さん、二人の詐欺話を見破り仲間入りする編集者に鈴木保奈美さん。
浩市さんが睡眠薬を飲んでうつらうつら夢遊状態で写植した文章を「幽霊が書いた本」として出版社に売り込む詐欺コメディですが、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード主演の『スティング』(1973)のように当時の邦画では珍しく軽妙でテンポの良い極上エンターテイメントコメディに仕上がっています。

らもさんの原作、中原俊監督の演出力も冴えているのですが、関西弁でとうとうと詐欺話を淀みなく語る豊川さんが『12人の優しい日本人』の陪審員11号を思い起こさせて特に秀逸でしたね。保奈美さんの小悪魔的なキュートさ、浩市さんの豊川さんとは真逆の愚直な佇まいとキャストのバランスも良いですね。脇の本田博太郎さん、中村梅雀さん、松村達雄さん、麿赤兒さん、上田耕一さんも良い味だしてます。

そして音楽は𠮷俣良さんとBONNIE PINKさん。
主題歌『Lie Lie Lie』とエンディング曲『たとえばの話』は作品世界にも溶け込み、当時も驚くぐらいオシャレでセンスに溢れてましたね。

神保町シアター(100席)は大入り満席。
公開当時まだ生まれていない若いお客さんが多数来場しており、こちらも嬉しくなりましたね。令和の今でも一切色褪せてない名作なので、ぜひ気軽に配信などで観れるようになって欲しいですね。

矢萩久登