「裕次郎と浅丘ルリ子、神戸と横浜が舞台 最高の取り合わせです」夜霧よ今夜も有難う あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
裕次郎と浅丘ルリ子、神戸と横浜が舞台 最高の取り合わせです
メディアミックス
今では当たり前の手法
60年代にそれをやって大成功させているのだから凄いことです
歌謡曲のシングル版リリースとその歌のイメージに合わせた映画の公開
これをタイミングを合わせて展開する
本作もそれです
しかし映画界の斜陽化に伴い、石原裕次郎のメディアミックス路線も本作が最後になります
それだけに力も入っていて大変に面白い
素晴らしい出来映えの作品に仕上がっています
石原裕次郎と浅丘ルリ子
この二人が共演した映画はこれだけあるようです
1957年 鷲と鷹、今日のいのち、踊る太陽 お転婆三人娘
1958年 明日は明日の風が吹く
1959年 世界を賭ける恋、男が爆発する
1962年 銀座の恋の物語、若い人、憎いあンちくしょう
1963年 夜霧のブルース、太平洋ひとりぼっち、何か面白いことないか
1964年 赤いハンカチ、夕陽の丘
1965年 泣かせるぜ
1966年 二人の世界、帰らざる波止場
1967年 本作、波止場の鷹
1968年 昭和のいのち
1969年 栄光への5000キロ
1970年 戦争と人間 第1部、待ち伏せ、ある兵士の賭け
まだあるかも知れません
60年代のトップスターの二人であるのは間違いありません
浅丘ルリ子は赤木圭一郎や小林旭との共演も多いのですが、やはり石原裕次郎との共演が一番!
彼女の細くて小さな身体が、裕次郎の高身長とガッチリした体型との対比で一層可憐さが強調されるのです
そこに裕次郎の恋のライバルの二谷英明
スマートで余裕がありさらには知的、しかも強い
こいつには流石の裕次郎もなかなか敵わない
お話は悲恋となるパターン
もうこれ最高!
物語の骨格は良く知られるようにカサブランカの翻案ですが、決してその模倣にはなっておらず、脇役のキャラクターの立ち方が良くできており大いに楽しめます
しかも、お話が序盤の浅丘ルリ子の交通事故から始まります
銀座の恋の物語でも彼女が裕次郎との待ち合わせに急ぐあまり交通事故に遭い記憶喪失となって、失踪してしまう展開でした
え~、またこれかよ~!と観客は思います
そう思ってなめてかかって観ていくと、おおっ!という展開になり、こりゃどうなっていくんだ?とグイグイと興味を引き寄せられていくという仕掛けとなっています
つまり観客がほとんど全員、銀座の恋の物語を観ているであろうことを知っての上のこころ憎い作劇を仕掛けているのです
神戸からはじまり、横浜を舞台にハイカラムードで統一されていて貧乏臭さは皆無です
裕次郎が経営している設定のラウンジのインテリアの美術が素晴らしいです
音楽を今風のR&Bにしたら恵比寿辺りにありそうです
1周か2周くらい回って、今あったら是非とも遊びに行きたい感じのイケてるお店なのです
明るいベージュの色目のスーツに当時まだ珍しかった淡いブルーのカラーシャツ姿の裕次郎の格好良さったらありません
浅丘ルリ子はシリアスな表情のシーンが続きますが、中盤での長い台詞のシーンは見ものです
彼女の細い身体のカーブにピッタリとフィットした白いハイネックのワンピースが大変に美しく似合っています
現代でもこんなに骨格から美しい女優はそういません
コックの仙吉役の高品格、その娘ヒロミ役の太田雅子のちの梶芽衣子、ボーイでボクサーのビル役の郷鍈治、刑事役の佐野浅夫、アジア某国の革命家グエン役の二谷英明
それぞれエピソードも楽しく、銃撃戦、アクションシーンもあり全く退屈しません
夜の操車場、波止場のシーンでの撮影もカメラと照明が素晴らしい良い仕事をしていて明るく見やすい映像を撮っています
裕次郎が彼女との結婚の為に買っていた大粒の真珠の指輪
それを夜の海に捨てると跳ねがあがり、その泡が真珠のように光るのです
そして浅丘ルリ子の頬を伝う涙も真珠のように光るのです
その耳にも真珠のピアスが光ります
そして思い返すと彼女が身に付けていたのは真珠のブレスレットや真珠のネックレスだったのです
どうです!小粋だと思いませんか?
今もカラオケでお年寄りに大人気の主題歌は、序盤と終盤に歌入りで挿入されますが、その他の劇中では歌はなくジャズぽいゴージャスな良いアレンジで幾度か流れます
傑作の歌謡映画です!
神戸の海岸近くの馴染みのバーに行きたくなりました