妖刀物語 花の吉原百人斬りのレビュー・感想・評価
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本当に悪い奴は誰だ。
1960年。内由吐夢監督。歌舞伎の物語を映画化。捨て子として育てられた男は長じて生糸の生産で財を成すが、顔のあざが原因で見合いに失敗し続けている。そんな時、初めて出かけた吉原で下級の女郎に心を奪われる。太夫に出世するという女郎の願いをかなえるべく惜しみなく金を注ぎ込むが、やがて天候不順などが重なって家業は傾いていく。追い詰められていく男は、自身が捨てられていた時に身に着けていた刀を売って金をつくろうとするが、その刀が実はいわくつきの刀で、、、という話。
コンプレックスをもつ男と女がいて、男は自身のではなく女のコンプレックス克服のために身を尽くすが、身の丈を超えた女の欲望に吞みつくされてしまう。しかも女の愛だと思っていたものが、実は女の欲望(差別された岡場所から吉原にやってきた自分が花魁として出世し、太夫となって裕福に暮らすこと)がその過程で仮に姿を取った幻だったことがわかってしまう。なんたる絶望。
ラスト、吉原で刀を振り回す男は女を切った後で「出てこい」と叫び続けているが、男はこんな窮地に男を追い込んだ本当に悪い奴を求めている。女やがめつい小屋主や薄情な商売仲間は本当に悪い奴が生み出している幻にすぎない。ほんとうに悪い奴は誰だ。それはもちろん欲望なのだろう。
籠釣瓶 花街酔醒
籠釣瓶 花街酔醒 カゴツルベぇ サトノエイザメ
と読むらしい❤
やっぱり、こう言ったドロドロ感が歌舞伎で国の宝になるんだよね。
さて、岡場所とは?
江戸幕府公認のクルワが吉原で、その他は所謂江戸幕府公認ではない。って事。
明治維新後は「赤線」って呼ばれた場所。近現代になっても岡場所は存在したが、たしか「青線」って言われたと記憶する。
その赤線は1958年4月1日より廃止になる。つまり、1960年の映画と言う事は時期的に「郭」が廃止になったプロパガンダ的な要素もあろうかと思う。
日本はつまり国が春を売る事を禁じている。それがオランダ、ドイツ、ベルギーなどの先進諸国が合法としている事を先ず知って、
我が国のその後の「吉原」がどうなったかを知れば、この映画は大変に勉強になると感じる。
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