妖星ゴラスのレビュー・感想・評価
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リメイク厳禁
過去に観た憶えもない、自分史とはかすりもしない1962年製の作品。なので思い入れとか懐かしみとか一切ないのだけれど、映画館で観ておいて良かった気がします。
なんて言うか日本の歴史を感じました。
幾人か見たことのある役者さんもいたしね。
特撮として評価するなら現代と比べると全くチャチいものだけど、いやいやそれは違う!
そもそも現代と比べてはダメ!
この時代の発想や技法、苦心があってこそ現代に繋がってくるのだから。
特にミニチュア技術は凄い、凄すぎる!
宇宙空間の撮り方なんかもよく考えられている。見れば何となく技法が想像できてしまうけど、人間や宇宙艇や宇宙ステーションの無重力空間の動きとかよく表現できている。
1962年製やで、アポロもまだ月に行ってない時代やで。
そしてストーリーの発想が凄い!
衝突コースの星をかわすのに地球を動かすとか、これ日本人の考えた発想かよ?
ギャグ漫画とかアニメとかにありそうな発想だけど実際に計算上の動力あったとして、南極から噴射して動くものなのかいな?
ついでに感心なのがブラックホールではなく死んだ恒星って設定。
ブラックホールだったら交わしようが無いもんな。
さて、感心ばかりしてるけど本当にダメなところもあって、あの空撮技術はアウトやろ。もっと丁寧に撮ろうや。
それに人間ドラマが本当にチープ。とにかくセリフまわしや撮り方がだめ。演出や設定にもっとこだわりを入れれば役者さんもいい演技できたと思うが。
あの冒頭の女子2人が人気のない真夜中の湖畔で全裸で泳ごうだなんて発想は超〜嘘くさい。
もったいないのが怪獣シーン、
あれ特にあっても無くてもいいコーナーだよね。しかも出てきてあっという間に討伐されて、何で出て来た?
地球の異変の現れの一つって表現だろうが、出すならもうちょい丁寧な扱いできなかったものかね?
ツッコミどころ満載だけど映画館で観れて良かったと思います。
大人も観て楽しめる家族向け作品てところかな?
敗戦から復興して、世界の信頼を得て、世界のトップレベルの技術を得ようと頑張っている日本の歴史の一部を見た気がします。
無いとは思うが変にリメイクとかしないで欲しい。この時代感と手作り感が良いんだよ。
アルマゲドンのパクリか!?
好調の東宝特撮ジャンルにおいて、当時最大の規模のスペクタクル巨編
午前十時の映画祭14にて。
宇宙から迫る脅威(自然災害)に人類が打ち勝ったと謳歌するサイエンス・フィクション。
怪獣映画とは少し路線を変えて、『アルマゲドン』(’98)や『ディープ・インパクト』(’98)などと括ることができる〝惑星衝突もの〟だ。『地球最後の日』(’51)がこのジャンルでは先駆的な作品だと思うが、これを目指した感はある。
でも、怪獣(巨大生物)もちゃんと登場したりする。
彗星が地球に向かってくるなら、地球を動かしちゃえ…という破天荒なアイディアは他にはなかったような気がする。
(噂の『さまよえる地球』(’19)という中国映画は、どうなんだろうか…)
公開は、ソ連のガガーリンが人類初の有人宇宙飛行を成功させた、その翌年。宇宙進出の夢が世界中に広がった時期だった。
そこから20年後の近未来を物語の舞台にしていて、宇宙パイロットが職業として存在している(公務員だろうか?)様子。
その他、テレビ電話以外の小道具や衣装に未来感はない。
宇宙パイロットたちが合唱する姿を今見ると鼻白むが、少し軍隊的な印象を受ける。
帝国陸・海軍とは異なる民主的な、アメリカ海兵隊のような、特殊能力を持つ自信と意気込みに満ちた、そんな軍体調だ。
さて、本作の地球移動作戦には原子力の平和利用というテーマが見える。
原子力爆弾で彗星を破壊するのではなく、原子力のロケットで地球の軌道を変えるのだ。
このハリウッド映画との明確な違いに、当時の東宝には被爆国としてメッセージを発するという意思が感じられる。
この映画が東宝での円谷英二特撮作品50本目だというから驚く。戦前の軍協力映画(軍人用教材映画・戦意高揚映画)の時代から円谷英二は東宝で特殊技術に力を発揮していたという。
前年の『モスラ』を凌ぐ巨費と構想期間・制作期間がかけられた超大作なのだが、残念ながら派手さに欠けるところはある。
南極の原子力推進基地は東宝随一の広さのステージにセットを組んで、実写人物とミニチュア動画を合成する技術も導入されているし、原子力ジェット噴射のシーンには別途オープーンセットを組んで、プロパンガス200本を使った猛火の中で撮影を行ったとのこと。
有楽町や勝鬨橋が洪水に沈むシーンのミニチュアは怪獣映画で培われた精巧な再現力で構築されていて、水を張ったプールに一気に水を流し込んであふれ出した水を撮影して量感を出すという新手法が用いられた。
さらに、水没した国会議事堂や大阪城のシーンは、実際の河川にミニチュアを持ち込んで、水門を開けてもらって撮影したという。木材で作ったミニチュアが流されてしまうトラブルとの戦いもあったらしいから、驚くばかりだ。
これら、想像を絶する職人の知恵と努力と体力によって作り上げられた映像も、怪獣が踏み潰す迫力には及ばなかった感じはある。
人々のパニックが描かれていない点も、小ぢんまりさせてしまった理由かと思う。
あの巨大セイウチが極めて残念で、あれはない方が良かったのではなかろうか…。
しかし、こういう作品の積み重ねが『日本沈没』(’73)という金字塔を建てたのだ。
未曾有の地球危機に打ち勝ったキャラクターたちと同様に、この巨大プロジェクトを成し遂げたスタッフを称賛したい。
昭和空想科学映画
空想科学特殊撮影映画
鑑賞するモチベーションを保つのが難しい
2025年一発目は東宝特撮!
60年前のアルマゲドン。
4K化を機にもっと再評価されても良いSF特撮の名作ですね。
2025年「午前十時の映画祭14」第1弾は本多猪四郎監督と円谷英二特技監督がタッグを組んだSFスペクタクル『妖星ゴラス』の4K版でスタート。
『妖星ゴラス(4K版)』(1962)
地球の6,000倍の質量の妖星ゴラス(黒色矮星)と地球との衝突を回避するため、ゴラスを爆破するか、南極にロケット推進装置を設置し地球の軌道を変えるか迫られた人類が奮闘する硬質なSFスペクタクル作品。
隕石衝突映画の代表作『ディープ・インパクト』(98)、『アルマゲドン』(98)よりも実に35年以上前に製作。さらに地球の軌道を変える荒唐無稽なプロットを現実味を帯びた科学的根拠を積み上げることでリアリティある作品に見事仕上げていましたね。
本作の出色な点は何といっても円谷英二特技監督が東宝特撮映画50本目の集大成として撮影日数300日かけた特撮パート。南極に設置された地球を移動させるための大掛かりなジェットパイプ基地も説得力がありましたし、クライマックスの日本が水没するスペクタクルシーンもミニチュアセットが精巧で今のCGと引けを取らぬ迫力、出来栄えでしたね。
またドラマパートも主演の池部良氏、白川由美氏、水野久美氏、久保明氏とオールキャスト。特に脇を固める学者、科学者、政治家役の上原謙氏、志村喬氏、平田昭彦氏はじめ西村晃氏、小沢栄太郎氏、田崎潤氏とベテラン名優の重厚な演技がよりリアルさを増していましたね。
因みに宇宙船鳳号乗員役の久保明氏は「ウルトラマン」のハヤタ隊員候補の一人だったようで本作でもハヤタ隊員(=黒部進氏)とそっくりなルックスと雰囲気で驚きました。
当時の怪獣ブームのなか無理矢理登場させ蛇足と言われた「南極怪獣マグマ」(その後着ぐるみを使いまわして「ウルトラQ」でトドラとして登場)は確かにジョットパイプによる急激な南極の気温上昇による生態系の変化で目を覚ますという話の整合性は取れていますが、急場で制作したためかデザイン、フォルムが悪く、海外版は全カットらしいですが、せっかくの硬質なSF作品なので確かにカットした方が良いですね。同怪獣が宣材ポスターのど真ん中に配置されていたため、わたしも長年同怪獣が主役(妖星ゴラスの正体)の怪獣映画と勘違いしていましたから何だかもったいないですね。
4K化を機にもっと再評価されても良いSF特撮の名作ですね。
60年以上前の映画とは思えない画像の美しさ
力強い設定
やっぱり出たか‼️巨大怪獣‼️
昭和37年の未来予想図
大きさで地球の四分の三、質量6000倍、
『ゴラス』と命名された黒色矮星が、突然(!)太陽系に現れただけでなく、地球に衝突するという。
人類存亡の危機に直面し、奇想天外、とんでもない方法で衝突回避を目指す姿を描く。
さて、人類の運命やいかに。
映画が公開されたのは、昭和37年。
映画の舞台は、昭和55年。
よって、映画は未来予想図なのである。
私の悪い癖で(?)、古い映画を見ると
画面の隅々から「時代の匂い」を嗅ぎたくなってしまう。
・館内放送?での時間の読み方が「ふたさんまるまる」(23時00分のこと)など、やはり旧軍調。
・日本政府が、当時の金で11兆8000億円(いまの25兆円相当か)かけて土星探検に出発させた宇宙艇『隼』は、ゴラスに衝突して全員遭難してしまうのだが、最後の瞬間に乗組員全員が万歳を唱える。
・隼の艇長役を務めた田崎潤はじめ、池部良など軍人あがりの俳優陣が見せる重厚な演技。
・挿入歌は、やや軍歌調。
・地方へ行くことを、「疎開しましょうよ」
その一方で、
・冒頭の着替えシーンや途中の入浴シーンなど、たぶん当時としては精一杯のお色気サービス
・ジェット機の飛行音、宇宙空間シーンの″ウィーン″という通奏低音、発射されるビーム音など、効果音すべてが、後年のウルトラシリーズと同じ(当たり前か笑)
・ブラウン管タイプの画面の小さなテレビ
・東京タワー、サンドイッチマン、繁華街の喧騒
・左ハンドルのタクシー(ハイヤー?)
・公開当時では、まだ珍しいはずのアパート
・当時まだ実用化されてないテレビ電話
など、「戦後17年目」に「戦後35年目」を空想したらこうなるんだ!、と感じさせる風物も満載だ。
とはいうものの、やはり最大の見所であり、
圧倒されるのは、VFXのない時代に「良くぞここまで!」と感嘆するしかない特撮技術だ。
宇宙船や宇宙空間、富士山麓の基地、無重力訓練の様子、津波、土砂崩れ・・・
これらを模型だけで再現するなんて(絶句)。
本当に、当時の技術陣の執念や努力には頭が下がる。
私のように懐古趣味で観るのも楽しいが、若い人には映画全編が、浮世離れした憧れの姿だと思いながら見ていただきたい。
隊長!意外と楽しめたであります!
史上初が多く世界の特撮映画に大きな影響を与えた重要作品
地球に隕石なりが衝突して大災害となる
そんなモチーフは今から考えれば、ありがちのお話しと思えるだろうが、1962年の公開時点では間違いなく世界初、誰も考えたこともないし、もちろん映画になったこともないものだ
本作がこのモチーフの開祖である証拠に、本作の次にこのテーマを取り上げた映画は、1979年のメテオまで17年も後のことになるのだ
誰もが知るアルマゲドンや、ディープインパクトになると更に19年後の1998年になる
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2020年11月加筆
1951年の米国映画「地球最後の日」が元祖です
全く失念していました
お詫びして訂正致します
その作品では地球は他天体と衝突して最後の日を迎えます
しかしその作品は極少数の選ばれた者だけが宇宙船で脱出すると言う物語です
本作のように地球そのものを動かして衝突を避けるという肝の部分は全く本作が史上初のものです
ですから本作の独自性は大きなものがあり、その価値が揺らぐものでは有りません
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劇中の台詞にあるように、地球が助かるには爆破するか、地球が逃げるか、二つにひとつしかない
どちらもできなければそのままぶつかるかしかない
先に挙げた作品も全てこの三つのバリエーションなのだ
その中でも最も映像化が難しく荒唐無稽な物語に、本作は挑戦しているのだから恐れ入る
しかも、このモチーフに史上初で取り組むのにだ
本作は特撮ファンなら良くご存知のとおり、後のウルトラQ や、ウルトラマンに継承されている点が幾つもある
俳優なら佐原さん、二瓶さん
メカなら科学特捜隊のビィートルになるVTOL機
怪獣ならウルトラQに登場するトドラ
これらは超有名なことだ
劇中歌「俺ら(おいら)宇宙のパイロット」は宇宙戦艦ヤマト2199の「銀河航路」の元ネタであることも有名だ
本作の中で予算が通らず計画が難航するというお話しも世界のSF 映画を見渡しても史上初だろう
予算問題を取り上げてくるのは、1966年のタイムトネル、1970年の謎の円盤UFOがある
特に後者は予算委員会と委員長がストレイカー司令官に立ちはだかって嫌みを言うシーンは本作が多大な影響を与えたものだと思われる
アンダーソン作品はこの時期はまだまだのレベルであり、本作はじめ日本の特撮映画の影響を真剣に吸収していたのは間違いない
本作の南極基地建設シーンはサンダーバードに確実に影響を与えたと感じられる
しかし本作で頂点に達したかもしれないミニチュアワークは21世紀でもまだ価値を放っている
妖星ゴラスの接近による潮汐作用で大規模な高潮が発生する
ラストシーンでは関東一円が水没している
津波としか思えない高さの急激な海面上昇が東京を襲うシーンは東日本大震災の記録映像のような迫真さを持っており、CGによるエメリッヒ監督作品の津波映像よりも現実感があるくらいだ
地球防衛軍、宇宙大戦争で欠陥だった科学考証はかなり力を入れて来てだいぶマシにはなった
東大の天文学の助教授の手ほどきも受けており、根本的なところや端々ではなかなかやるなという映像も見せる
しかし付け焼き場なのは当時の限界だったのだろう
本作の公開は1962年3月
ガガーリンの史上初の有人宇宙飛行はその前年1961年4月のことだったのだから
宇宙の正しい科学知識は乏しかったのだ
ましてやブラックホールと言うような概念も学会でも発表すらされていない時代だったのだ
ともあれ、世界中の特撮業界が本作を手本にしてこれを上回るものを撮ろうと猛烈な努力をしたのは間違いないだろう
キューブリックが本作を観ているのは疑いようもない
2001年宇宙の旅には本作が元ネタになっている映像が散見されるのだから
本作のシーンを下敷きにした映像として、おおとり号のドックに宇宙カプセルを収容するシーン、宇宙ステーションにおおとり号がドッキングするシーンを挙げることができる
キューブリックこの映像を元に2001年宇宙の旅で遥かにグレードアップして凌駕してみせた
物語の始まりは1979年のクリスマスで、ラストシーンは1982年の2月という設定だ
面白いのはその1979年とはメテオの公開された年であることだ
そしてその丁度40年後は今年に当たる
そしてなんと中国が地球の軌道を変えてしまうという本作をベースにしたとしか思えない映画を公開しているのだ
「さまよえる地球(中国語:流浪地球)」がそれだ
これもなにかの巡り合わせによるものなのかもしれない
まだ観ていないが、ぜひ観て観たいものだ
中盤、宇宙パイロット達が宇宙省長官(大臣?)に直談判にヘリで向かうときに東京タワーが空撮でフューチャーされています
赤羽橋上空辺りからタワーを挟んで飯倉の交差点、神谷町、都心方向を望んでいます
真下の芝公園はもちろんですが麻布台も東麻布も空き地や木々が多く普通の民家がパラパラと見える程度
郊外のような光景でした
こういった映像も楽しめます
なぜ東京タワーが長々写されるのか不思議でした
もう完成して4年も経っているのですから
恐らく東京タワーは高度成長の象徴なのです
本編で日本は地球の危機に国際社会をリードして堂々と役割を果たそうとしています
失った自信を取り戻して、国際社会に再度乗り出して活躍していくのだという希望に溢れています
劇中歌「俺ら(おいら)宇宙のパイロット」を歌う若き宇宙パイロット達は60年安保で騒乱を起こした世代です
彼らも科学技術を振興して豊かに復興し国際社会に貢献する、新しい日本をリードしていって欲しいとの期待が込められているのだと思いました
その意味で本作は東京オリンピックを先取りした映画だったのだろうと思います
それが本当のテーマだったのだと思います
観なおしは良し悪し
昔、観て面白かったという漠然とした記憶しかない、同類が多いのか2か月待ちでやっと借りられた。
この種の衝突パニック映画の殆どは小惑星規模で爆破か進路変更可能な設定、ノアの方舟的な古典もあったが地球を動かす発想は本作しかない。なぜ無かったかと言えば奇跡の神頼みや魔法の物語と一線を画したSFならではの作家の矜持だろう。そもそも重量が6×10の21乗トンもある地球の軌道を短期間で変えて回避することは不可能、それを数字のトリックで一線を越えたのが本作である。
世界の終りは万人の関心事、原子力と数字を出せば科学的、大衆は崇高な犠牲者好き、インテリには古典の引用、年寄の考えそうな若者像、女性には恋愛要素、子供には怪獣(マグマ)、おじさんには美人、必然性のない入浴シーンでも見せておけば万事無難と言わんばかりの欲張り且つ安直な発想、東宝娯楽映画の典型パターン。東宝・特撮50本目の記念作品、いくら昔といえど豪華俳優陣、予算をかけてこの程度、初代ゴジラの真摯な志はどうしたのだろう。観なおしは良し悪し。
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