「4K化を機にもっと再評価されても良いSF特撮の名作ですね。」妖星ゴラス 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)
4K化を機にもっと再評価されても良いSF特撮の名作ですね。
2025年「午前十時の映画祭14」第1弾は本多猪四郎監督と円谷英二特技監督がタッグを組んだSFスペクタクル『妖星ゴラス』の4K版でスタート。
『妖星ゴラス(4K版)』(1962)
地球の6,000倍の質量の妖星ゴラス(黒色矮星)と地球との衝突を回避するため、ゴラスを爆破するか、南極にロケット推進装置を設置し地球の軌道を変えるか迫られた人類が奮闘する硬質なSFスペクタクル作品。
隕石衝突映画の代表作『ディープ・インパクト』(98)、『アルマゲドン』(98)よりも実に35年以上前に製作。さらに地球の軌道を変える荒唐無稽なプロットを現実味を帯びた科学的根拠を積み上げることでリアリティある作品に見事仕上げていましたね。
本作の出色な点は何といっても円谷英二特技監督が東宝特撮映画50本目の集大成として撮影日数300日かけた特撮パート。南極に設置された地球を移動させるための大掛かりなジェットパイプ基地も説得力がありましたし、クライマックスの日本が水没するスペクタクルシーンもミニチュアセットが精巧で今のCGと引けを取らぬ迫力、出来栄えでしたね。
またドラマパートも主演の池部良氏、白川由美氏、水野久美氏、久保明氏とオールキャスト。特に脇を固める学者、科学者、政治家役の上原謙氏、志村喬氏、平田昭彦氏はじめ西村晃氏、小沢栄太郎氏、田崎潤氏とベテラン名優の重厚な演技がよりリアルさを増していましたね。
因みに宇宙船鳳号乗員役の久保明氏は「ウルトラマン」のハヤタ隊員候補の一人だったようで本作でもハヤタ隊員(=黒部進氏)とそっくりなルックスと雰囲気で驚きました。
当時の怪獣ブームのなか無理矢理登場させ蛇足と言われた「南極怪獣マグマ」(その後着ぐるみを使いまわして「ウルトラQ」でトドラとして登場)は確かにジョットパイプによる急激な南極の気温上昇による生態系の変化で目を覚ますという話の整合性は取れていますが、急場で制作したためかデザイン、フォルムが悪く、海外版は全カットらしいですが、せっかくの硬質なSF作品なので確かにカットした方が良いですね。同怪獣が宣材ポスターのど真ん中に配置されていたため、わたしも長年同怪獣が主役(妖星ゴラスの正体)の怪獣映画と勘違いしていましたから何だかもったいないですね。
4K化を機にもっと再評価されても良いSF特撮の名作ですね。