「驚天動地の作戦に真実味を持たせる」妖星ゴラス しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
驚天動地の作戦に真実味を持たせる
東宝特撮映画50本記念作品。
DVDで2回目の鑑賞。
地球に迫り来る怪彗星ゴラスは、赤色に煌々と輝いていて、人類に災厄を齎そうとする凶々しい雰囲気が堪らない。
土星の輪や月を吸収しながら、地球を目指してまっしぐらに進行していく様を描いた特撮が素晴らしい限りだった。
ジェット・パイプ敷設シーンでは、広大な南極のセットでスケール感を演出。南極の大地から吹き上がるジェット噴射の火力を見ていると、「もしかしたら本当に地球は移動出来るのではないか」と納得させられるほどの説得力があった。
クライマックス、大津波のスペクタクルに目を見張る。全てを押し流す津波の猛威に大自然の怖さを実感させられた。
自然法則を人工的に曲げる行為は大いなる代償を伴ったが、無事ゴラスを回避することに成功し、見事な大団円だ。
突如出現したトド怪獣マグマははっきり言って蛇足感が否めないが、スタッフのサービス精神として個人的には好きだ。
マグマを退治したVTOLの模型は、後に「ウルトラマン」に登場するジェットビートルへと改造されたそうである。
ゴラス衝突までの時間的余裕が無い中、見舞われる数々のトラブルにハラハラ、ヒヤヒヤした。度重なる困難を乗り越えようと決死の覚悟で奮闘する人々の物語が胸に迫って来た。
本作は特撮作品にしては珍しく時間の経過が年単位であるから、東宝特撮ユニバースから外した方が良いかもしれない。それとも、ここは流行りのマルチバース理論を持って来るか。
[余談]
荒唐無稽な作戦に真実味を持たせるため、エンタメ性を残しながらも、出来得る限り科学考証にこだわって映像化されているところが、本作が名作足る所以のひとつであろう。
本多猪四郎監督は撮影前、必要な知識を身につけるため東大理学部に1ヶ月間、助監督と一緒に通ったそうだ。ドキュメンタリー・タッチを成し遂げるための努力に驚嘆である。
[以降の鑑賞記録]
2020/09/16:Amazon Prime Video
※修正(2025/01/12)
初めて劇場で観た時は、突貫工事ばかりで、マグマが出てほっとしたんですが・・DVDで何度か見直すと、バンザーイバンザーイで涙を誘われたり、きれいなご婦人ですぜとか、写真を投げ捨て危ない! とか細部に刺さる所が有りました。
しかし「おいら宇宙のパイロット」は、いつも早送りします。