「流石のオールスター!これぞ娯楽!」雪之丞変化(1963) osmtさんの映画レビュー(感想・評価)
流石のオールスター!これぞ娯楽!
いやあ〜
スゲエ〜
面白かったあ〜
大映映画のオールスター…
ハンパねえ…
ストーリーは大方予想通り。
若尾文子の行く末も、ラストの締めの終わり方も、ほぼ予想通り。
台詞も芝居も割と紋切り型だし(ワザと?)
いわゆるツッコミどころも、まあまあ多い。
なのに、観終わった後の、この満足感たるや!
一体なんなんだ?
予定調和なんていうシレッとした批評気取りの言葉なんぞ軽く笑い飛ばし「これぞ娯楽よ!」とでも言わんばかりの千両役者たちの本物の魅力…
とでもいうべきか、あるいは、まさに様式美とでもいうべきか…
しかし、旧態依然とした様式などに安住したりしないのは、流石の市川崑。
この時代らしく、京都の撮影所でのセット撮影だが、所詮は、撮影所のセットの中での作り物の世界なのだ、という事を逆手にとっていたのかもしれない。
スタジオセット特有の極端に作り込んだダークな夜の闇や、ワイドスクリーンを活かした意外な構図のカメラワークも含めて演出がモダン。
やはり、ジャズの導入も効いている。
そして、なんといっても、長谷川一夫のアノ目。
もうアノ目だけで、観客を引き込んで、有無を言わさずに説得させてしまう。
まさにスター俳優の面目躍如。
ちなみに、あの闇太郎…
随分と似てるけど兄弟とかいたっけ?と思っていたら、なんと、本人二役であった。
長谷川一夫を見慣れている人達は、最初の時点で直ぐ分かるのだろうが…
これは、1930年代の第1作の頃から同様だったみたいで、当時としては、所謂お約束だったのだろう。
しかし、こういった作品をリアルタイムで観て育つのと、そうでないのとでは、圧倒的な体験格差が生まれると思う。
やはり、あのシネマスコープ特有のデカくてワイドなスクリーンが効いている。
自宅のディスプレイじゃ、あの満足感は絶対に得ることは出来ない。
これは是非この機会、映画館で観た方がいい。
というか、この頃の日本映画、あまりにも素晴らしい作品が多すぎる。
今回だけじゃなく、毎年、年に1回は同様の特集上映を定期的に続けて欲しい。