劇場公開日 1978年4月8日

「使いたいセリフ盛りだくさんの男映画」最も危険な遊戯 永賀だいす樹さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5使いたいセリフ盛りだくさんの男映画

2013年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

興奮

麻雀に負けて雀荘を追い出されるというコミカルなシーン。ところが殺し屋・鳴海昌平としての場面にシフトすると、打って変わってハードな展開に。ガンアクションもさることながら、標的の情婦を狙うという建前でエロシーンも手抜きしない。
バオイレンスをむき出しにした作風に感嘆してしまう。

今の流行からすると、本作のアクションは動きも無駄が多いし射撃音もチープだけど、込められた殺気は、今でも通用する迫力に満ちている。
特に廃病院のシーンは圧巻。10人弱の誘拐犯グループを、あっという間に射殺するスピード感は見事。

ターゲットの居場所を探る手段が「標的の情婦をたずねて吐かせる」というのがうまい。
アンタは殺し屋なのかジゴロなのかどっちなんだい?と問いたくなる反面、アクションの中に無理なくエロを落とし込んで、オッサン層が喜ぶシーンを提供する理由付けには悪くない。

他にもロングバレルのリボルバーを片手撃ちして命中させちゃうとか、銃撃された腹の傷が癒えるのが早すぎるとか、ツッコミどころはたくさんあるような気もする。
だけど、松田優作の雄姿があると、そういう非難は出てこなくなってしまう。逆に瑣末な問題に時間を割かず、観客の期待に応える良作だというように評価したくなってしまう。

結局のところ、本作は松田優作なのだ。
たとえば『ダークナイト』という映画をクリスチャン・ベールの作品という人はいないだろう。「ヒース・レジャーのジョーカーがすごかった」という人はいても、だからといって彼の映画だという人もいないと思う。

ところが本作は松田優作という役者がいて初めて成り立つ。

彼のキャラクター性が映画に映りこみ、それが生き生きと輝くからこそ、映画としても魅力を放ち始める。
そういう性格の映画なのだ。

こうした映画の魅力の一つがセリフ。
次にあげたようなセリフは、実際に使うとけげんな顔をされるか、悪くすると小突かれるだろうが、一度は使ってみたい魅力を秘めている。

「なんなんだよ。一回寝たくらいで女房面されたらたまらんぜ」
「(ボコボコに殴られたあとで)・・・ありがとうございましたァ」
「こんなことならカッコつけないで食っときゃよかったんだよ、パクッとよう」

上っ面でカッコつけるのではなく、さらけ出してタフガイとして立つ。
その姿が伝わる作品だと思う。

では評価。

キャスティング:8(松田優作という役者あっての本作)
ストーリー:10(アクションのテンポのよさが引き立つ)
映像・演出:8(銃撃戦に力が入っている)
セリフ:10(オッサンなら使ってみたくなるセリフの宝庫)
バイオレンス:8(ガンとエロ、両方で暴力的)

というわけで総合評価は50点満点中44点。

"松田優作"という俳優のハードボイルドな部分を楽しみたいなら、本作品がオススメ。
男性に都合のいいストーリーに腹を立てないなら、女性にもオススメ。

永賀だいす樹